浅草橋の居酒屋

浅草橋のガード下を歩いていたら、「もつ煮込み350円、酎ハイ350円」と書いた黒板を見つけた。安さに惹かれて暖簾をくぐる。中に入ったらご主人がカウンターに座ってテレビを見ていた。カウンターの中にダンボール箱やレジ袋が雑然と並んでいて、いかにも暇そうなお店。他にお客さんはいない。しくじったと思ったがもう遅い。カウンターに座って酎ハイともつ煮を注文する。しばらくは黙って呑んでいたのだが、さすがに二人っきりでずっと口をきかないというのも気まずい。「今日は寒いですね。」と、話しかけると、ご主人はポツポツといろんなことを話はじめた。浅草橋に店を出して13年、今年76歳になるそうだ。新潟県糸魚川出身で、中学を卒業してからしばらく足尾銅山で働いていたけれど全然お金がたまらないので3年で止めて、親戚を頼って東京に出てきた。ずっとその親戚がオーナーの喫茶店を任されていたが、13年前に浅草橋で居酒屋を始めたそうだ。今は錦糸町に住んでいる。浅草橋は客単価が安くて、秋葉原で780円のランチも浅草橋では700円以下じゃないとお客さんが来てくれない。自分が年をとるのにつれて常連のお客さんも年をとっていくので、最近はお客さんがどんどん減っていくけど、まあ食っていくくらいは稼げる。もう少し遅い時間になるとボツボツ常連さんが来るんだけれどなぁ。


もつ煮にはネギがたくさんのっけられてピリッとして、酎ハイは焼酎が濃いめで一杯だけでほろ酔い。もう少しじっくりお話を聞きたかったのだけれど帰りの飛行機の時間がきたので、また来ますといって急いで店を出てきた。