農業で稼ぐ!経済学

この本を読んで驚くのが農業関連予算の額の大きさと、目的のあいまいさ。

日本の農業生産額約8兆円のうち、赤字補てんの対象となるコメは1兆8,000億円、小麦は290億円、大豆は240億円、3つの穀物を合わせても2兆円に満たない規模です。これらは日本の農業生産額のわずか2割にすぎず、市場は年に2,3%ずつ縮小しています。それに対して補償されない野菜、果樹、花卉等の生産額は、それぞれ2兆3,000億円、7,600億円、5,000億円で、その他と合わせて農業市場の半分4兆円を越える成長市場です。
縮小する2兆円弱の国産穀物市場に所得補償1兆円を投入すれば何が起きるか。あまりにも財政投入規模が大きすぎて民間事業というより国営事業といったほうがよいでしょう。

わずか2兆円の国産穀物の生産を維持するために、農家の所得保障を目的に1兆円の税金をつぎ込むのはどう考えてもおかしい。国の計画に協力して赤字の穀物生産に協力すると1ヘクタールあたり最大95万円の補助金がもらえるそうだ。


そして税金をつぎ込む大義名分となっているのが、カロリーベースの食料自給率を上げるため。しかし、このカロリーベースの食料自給率という考え方も怪しいらしい。

  • カロリーベースの食料自給率自給率を評価しているのは世界で日本だけだということ
  • 貧しい国は海外から食料を輸入するお金が無く、国産の穀物だけを食べているのでカロリーベースの自給率は高くなること(つまり、日本は、豊かであるが故に外国から食料を輸入できるので自給率が低くなる。)
  • 穀物の国内生産額に農家の自家消費分がはいっていないこと
  • 穀物消費量に食品が廃棄される分も含まれていること


など、日本の食料自給率を低く見せるために恣意的な指標となっているそうだ。


税金の無駄遣いというだけでない。市場の需要の無い穀物生産に巨額の補助金が支給されることで、中小零細農家が市場から退出せずに残り、大規模生産を目指す農家への土地の集約が進まいなことや、付加価値の高い野菜や果物への生産のシフトが妨げられるという悪影響もある。農業を効率化し拡大するという農業政策本来の目的にも貢献しないというのだ。


うーん、こんなお金の使い方してる余裕はないはずなのに。

農業で稼ぐ!経済学

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