青の物理学 空色のなぞをめぐる思索

「空はなぜ青いのか?」という疑問に対して人がどう考えてきたのかを、一冊まるごと使って答えていきます。簡単な話かと思いきや、空が青く見えるには、光の粒子説と波動説、原子論、アボガドロ定数などの物理のお話から、網膜が色をどう感じるかという生理学的なお話、人が色をどう区分するかという認識論まで関わってくる。


まず、古代ギリシャの哲学者たちが考えた、見ることの仕組みが面白い。

視覚について、相反するふたつの説が登場した。ひとつは、目は能動的な器官であって、目から出た光が物体に当たることによって、その物体が見えるようになるとする能動的視覚説。もうひとつは、目は受動的な器官であって、物体から発せられる光が目に入ることによって、その物体が見えるようになるという受動的視覚説だ。古代ギリシャ人は、どちらの説も真面目に受け止めて検討した。

エンペドクレスは、あらゆる物体は、常に薄膜のようなものを放出しており、目はそれを捉えて見ていると考えたそうだ。


大気中の何かが光を反射して青く見えるのだというふうに、かなり昔から考えられていたらしい。問題はそれが何かだ。空気中の水蒸気なのか? 塵なのか? 泡のようなものが反射するという説もあった。空気の分子そのものが太陽の光を散乱して青く見えるということが認められるようになるには、原子論が確立する20世紀までまたなければならなかった。


空気の分子が光を散乱するときは、波長の短い光ほど強く散乱する。それで、空が青く見えるのだ。と途中でとりあえず結論づけられる。やれやれと思うと、そこから、波長が短いほど強いのなら、どうしてもっと波長が短い紫色に空は見えないのか。と更に疑問は続く。その先は、本書を読んでみて下さい。


普段あたりまえだと思っていることも、よく考えてみると、不思議なことがたくさんでてきます。

青の物理学――空色の謎をめぐる思索

青の物理学――空色の謎をめぐる思索