松丸本舗主義 奇跡の本屋、3年間の挑戦

松丸本舗が9月末を持って閉店した。残念だ。この本は松丸本舗の3年間にわたる顛末をまとめたもの。様々な分野で活躍さらている方から寄せられたメッセージも収録されている。


東京出張の帰り、越後湯沢行きの新幹線の出発までに時間があると必ず立ち寄った。思いがけずたくさん本を買ったこともある。丸善の4階の奥まった場所にできた松岡正剛さんが監修した本屋。らせん状に本棚が並び、普通の図書分類とは全く違った、独特の意味のつながりに沿って本が並んでいる。本好きの有名人の本棚を再現したコーナーもある。一旦迷い込むと、「あぁ、この本も欲しかった、こっちも買いたかったんや。これも面白そうや。」と次から次に気になる本がたくさんでてきて、時間がいくらあっても足りない。半日、いや1日ずっと本棚の隙間に篭っていたくなる本屋さんだった。


欲しい本が決まっていれば、アマゾンで検索したり、郊外の大型書店に行って店頭の端末で検索すれば済む話だ。松丸本舗に行くと自分では読もうと思ったこともないような本に出会うことができた。朝日新聞記者の中村真理子さんはこの本のなかで次のように言っている。

「探せないけど、出会える本屋」。
取材に応じてくれた、売場長の宮野源太郎さんの言葉が松丸を一言で表している。買う本が決まっているなら、下の階で検索端末に書名を入力する方が早い。買うジャンルが決まっている人も下に降りてください。松丸では探せないから。でも大きな得意技がある。それば、予想外の本との出会いを与えてくれる文脈棚。検索時代のいま、松丸は「迷い」を与えてくれる稀有な書店であったと思う。


日本では、もうこんな本屋さんが存続する余裕もなくなってしまったのだろうか。どこかの図書館の中で再現することはできないだろうか。

松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦。

松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦。