チューリングの大聖堂 コンピュータの創造とデジタル世界の到来

20世紀半ばに、フォン・ノイマンが初めて「プログラム内蔵型コンピュータ」を作った頃のお話。


17世紀にライプニッツが0と1ですべてを記述できるという原理をとなえ、アラン・チューリングが万能計算機が可能だという数学的裏付を確立し、フォン・ノイマンが電子回路でそれを実現する歴史。アインシュタインゲーデルフォン・ノイマンが在籍し、コンピュータ創造の舞台となった、プリンストン高等研究所ができるまでのいきさつと、コンピュータのはじまりに関わった人達の物語。必ずしも信頼性が高いとはいえない真空管陰極線管をうまく使ってコンピュータを組みあげるまでの経緯。原爆や水爆の起爆や、気象変化の数値シミュレーション、乱数を使って数値シミュレーションを繰り返す、モンテカルロ法、自己複製する数値生命体をコンピュータで動かしてみること、出来たばかりのコンピュータをどんな人がどうやって使ったか。


こんな話が、時系列に関係なくテーマが折り重なるように進んでいく。とっつきにくいけれど、丁寧に読めば一つの出来事をいろんな面から知ることができて面白い。ナチスによって迫害されたユダヤ人研究者を救うために高等研究所が作られたことや、大砲の弾道計算、暗号解読、核兵器の開発などに膨大な数値計算が必要とされていたことを考えると、戦争がコンピュータの誕生に果たした役割は大きいと思った。


著者のジョージ・ダイソンは物理学者で、高等研究所にも在籍していたフリーマン・ダイソンの息子。この親子のことを書いた「宇宙船とカヌー」も面白い。

宇宙船とカヌー (ちくま文庫)

宇宙船とカヌー (ちくま文庫)

宇宙船とカヌー http://d.hatena.ne.jp/benton/20081111/p1