白湯

この季節、朝起きぬけに白湯を飲むのが楽しみだ。鉄びんに水を入れてガスにかける。火は鉄びんの底に接するか接しないくらい。弱めの中火くらい。5分ほどでシュー、シューと湯が沸く音がする。この音のことを、お茶の世界では「松籟」といい、松林を風が通り抜ける時の音にたとえる。アルミやステンレスの薬缶からはでない音色だ。カルキ成分を飛ばすため、松籟を聞きながらそのまましばらく沸騰させておく。

 

急須で一旦受けてから湯呑みに注ぐ。少し冷めたぐらいのところを呑む。もわっとしたお湯が、前の晩の酒で疲れた胃袋の襞一枚一枚を優しく包んで染み込んでいく。お茶だと胃袋に吸収されるときに少し抵抗があるような気がする。

 

ストーブの前では黒猫が寝ている。