暗がり坂

仕事帰りに、尾張町のおでん屋さん「長平」に寄っていこうと、尾張町の裏通りを歩いていると、向こうから若い女性が歩いてくる。スマホ片手に道に迷っている様子。観光客かと思いつつも、そのまますれ違おうとすると、スマホを見せながら英語で話しかけられた。日本人かと思ったら中国からの観光客だったようだ。

 

スマホの画面の「暗坂」と「明坂」を指差してここに行きたいと言う。尾張町から主計町へと降りていく坂道、「暗がり坂」と「あかり坂」のことか。確かに尾張町からだとどちらも入り口がわかりづらい。暗がり坂は神社の横をずっと入ったところだし、あかり坂も住宅の入口にしか繋がっていないような細い路地の奥にある。

 

OK. follow me. と言って、暗がり坂につながる神社へ向かって歩き出す。日が暮れて辺りは暗いし、神社の奥の人目につかないところへ連れて行くことになるので、変に意識してしまい無言で歩く。ようやく、坂の降り口までたどり着き、This is Dark slope.というと、にっこり笑って、Thank you.と言われて別れた。

 

どこから来たの?とかもっと話せばよかったかな。それにしても、暗がり坂なんてマニアックな場所をよく調べて来たもんだ。でも、若い女の人が、異国の地で夕暮れの路地裏をウロウロするのは危険だろ。など考えながら引き返す。

 

金沢の街と人を信頼されていると受け止めることにした。そう思うと少しうれしい。