須賀敦子全集 第3巻
「ユルスナールの靴」、「時のかけらたち」、「地図のない道」のほか、1993年から1996年に発表されたエッセイが収録されている。
「時のかけらたち」の中の「ガールの水道橋」が良かった。日本のフランス語学校で、フランス人のジャックと知り合いになる。ジャックがフランスに帰る。1年後にパリに住むジャックを訪ねる。さらに1年ご、故郷のニースに帰って結婚することになったジャックを訪ねる。その時にジャックが2馬力を運転してガールの水道橋を見に連れて行ってくれた。という話。
文学をやりたいと思いながら日本に来たものの、将来が全く見えないジャック。イタリア人の夫を亡くして、ミラノでの生活を全てたたんで先の見通しのないまま日本に帰って来た須賀。異国で生活して宙ぶらりんになった者同士の会話が心にしみる。