知の果てへの旅

 著者のマーカスデュ・ソートイはオックスフォード大学の数学教授。また、「科学啓蒙のためのシモニー教授職」にもある。エクセルやワードを開発した、チャールズ・シモニーの寄付が寄付して、その名の通り科学を広く世の中にPRするために設置された職で、前任者は「利己的な遺伝子」を書いた生物学者のリチャード・ドーキンス

 

この本では、カオス理論、量子理論、相対性理論、宇宙の始まり、宇宙の果て、人の意識、無限、不完全性定理などに関して、現在のところ科学でどこまでわかっているのか、将来どこまで知りうる可能性があるのかを探っていく。著者はそれぞれの分野の第一線の研究者を訪ねインタビューを重ねる。

 

数学者が語っているからなのか、画期的な発見や理論の構築にあたって、数学が大きな役割を果たしてきたことが強調される。現実と関係がない公理と証明によって構築された数学の世界が、素粒子の存在を予測したり、宇宙の成り立ちを説明するというのも考えてみれば不思議なもんだ。

 

科学について多くの人々に関心を持ってもらうために、幅広い分野を扱っているので、個別のテーマへの踏み込みが浅いのは仕方のないところ。あとは、読者が関心のある分野を深堀りすべきなのだろう。

知の果てへの旅 (新潮クレスト・ブックス)

知の果てへの旅 (新潮クレスト・ブックス)