アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ

これが岩波新書か。と思う黒い表紙。ぶっ飛んだ文体でアナキズムを語る。

 

アナキズムというと、何するかわからないヤバい奴、あまり近づかないほうが良さそう。という印象しかなかったけれど、乱暴にまとめると、既成のどんな概念にも支配されないこと。効率、経済性、正義、エコなどの価値観を押し付けてきて、その価値観で支配しようとするものには徹底して抵抗しろ、ぶち壊せということ。

 

農薬や化学肥料をたくさん使って栽培した大量生産された農産物は体に悪いし地球環境にも悪い。よって、無農薬、有機栽培のものを食べる。それはそれでいい。有機栽培の玄米食を食べる。大いに結構。しかし、その原理にとらわれて、他人がビッグマック食べているのを、側からやいのやいの言うな。ビッグマックは体に悪いかもしれないけれど、時々食べると最高にうまいやろ。それを否定するな。ほっといてくれ。と言うこと。

 

ツイッター上などでの議論に感じる息苦しさは、右にしろ左にしろ、金儲け万歳にしろエコにしろ、あるいは、喫煙にしろ禁煙にしろ、どちらも自分が支持する原理を世の中隅々にまで徹底的に行き渡らせようとする、押し付けがましさへの拒否反応かもしれない。そんなこと当事者同士で話して決めたらええやん。なんやったら殴り合いして決めたらええやん。ということまで、法律で一律に決めなければ、社会に徹底しなければ、ければと言うのなら、そんな押し付けがましいもの、ぶち壊してしまえ。

 

最近、娘が自然食品系の食べ物を扱っているお店をみると、「あ、五穀米系ね。私マジダメやわ。」と突き放すように言う。何でそんなこと言うのかと不思議だったが、五穀米系のお店特有の押し付けがましさへの拒絶と見た。

 

文体はぶっ飛んでるけれど、濃い内容の本です。

アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ (岩波新書)

アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ (岩波新書)