ぼくの伯父さん

伊丹十三の単行本未収録エッセイ集。2017年につるとはな、から出版されている。

 

1961年に伊丹十三が俳優としてヨーロッパに長期滞在した時の出来事をネタに書いたエッセイ、「ヨーロッパ退屈日記」は、食べ物のことやクルマのことなど「あの時代に、もうこんなこと言うとったんか。」という驚きが いっぱいだったが、この本も恐れ入りました。

 

60年代に書いたエッセイの中で、北京ダックを自作して、しかも鴨を包んで食べる小麦粉の皮の調理方法も説明している。ごま油を塗って2枚重ねたままフライパンで焼いてから蒸して、出来上がってから1枚ずつ剥がすとか具体的。自分の親たちの暮らしと比べるとその差に驚く。そういえば、伊丹が監督した映画「タンポポ」でも中村伸郎が北京ダック食べるシーンがあった。

 

「かぶと虫の歌」は、イギリスに住んでいた頃、デビューしたばかりの頃のビートルズをテレビで見たことから始まる。彼らのマッシュルームカットは、中世のイギリスの農民の髪型にそっくりだと気づいた話に展開して、最後は伊丹が小学校の時に書いた、ミヤマクワガタの観察日記で終わる。縦横無尽だ。

 

昔のエッセイ、特に外国のことや、女性、結婚を語ったものは、古臭く感じてしまううことが多いけれど、伊丹十三のエッセイは今読んでも新鮮で、面白い。

ぼくの伯父さん 単行本未収録エッセイ集

ぼくの伯父さん 単行本未収録エッセイ集