白鯨
題名だけならみんな聞き覚えがあるメルヴィルの「白鯨」。52歳にして初めて読んでみた。
海洋冒険小説として、あるいは19世紀の捕鯨がどのように行われていたかを知るよすがとして興味深い。
母船から銛うちを乗せた小さな手漕ぎのボートを出してクジラを追う。クジラに銛が打ち込まれると、銛に繋がれたロープにボートが引かれる。ロープを長くしたり短くしたり調整しながら、隙を見て槍でクジラを突き刺し、弱るのを待つのだ。当時の捕鯨は、照明ランプ用の油、鯨油を採取することが目的なのでクジラを仕留めると、母船に横付けして、皮をはいで皮やその下の脂肪を、釜に入れて煮詰めて油を集める。肉はほとんど食べなかったらしい。小説の中に、夜に密かにクジラの尾の身をステーキにして食べる船員の話があるが、これも、社会の常識に反すること、気味悪いこととして語られている。死んでしばらく経過して腐臭を放つクジラの胃袋に潜り込んで、クジラの結石で龍涎香と呼ばれる香料の元を手に入れる場面もある。
メルヴィルは実際に捕鯨船に乗っていただけあって、当時の捕鯨の実態がよくわかって読み物として大変面白い。しかし、モームが「世界十大小説」に挙げるほどかと言うと、味わうために必要なバックグラウンドを私が持っていないからなのだろう、小説としての面白さが今ひとつピンとこなかった。
小説に登場する冷静沈着な航海士の名前がスターバック。あのスターバックスの名前の由来だそうだ。
- 作者: ハーマン・メルヴィル,Herman Melville,八木敏雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/12/16
- メディア: 文庫
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