タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源
タコは5億個のニューロンを持っているそうだ。これは、高度な知能を持つ哺乳類や鳥類に匹敵くするくらいの数だということだ。そして、タコは、知能、意識を持っているように振る舞う。
蓋をした瓶の中に餌となる海老を入れてタコに与えると、タコは試行錯誤しながら蓋を開けて海老を食べる。ダイバーに興味を持つかのように近づいてきて、足を伸ばして確かめるような動きをする。実験室の水槽で飼われているタコは水槽の中から気に入らない人に水を噴きかけるそうだ。人なら誰にでもというわけでなく、特定の人を認識して水をかけるのだ。洋服を替えてもちゃんと気に入らない人を識別する。
著者は筋金入りのダイバーでオーストラリアの海中でタコを観察する。タコを題材に意識の起源を考察する。神経系統を構築し維持するのは生物にとって、かなり大きな負担になるにも関わらず、タコやイカが属する頭足類が膨大な神経系統を発達させたのは何故なのか?
著者はもともと頭足類はアンモナイトのように硬い殻を持っていたのだが、その殻を脱ぎ捨て身軽になったことに始まるという。殻がなくなったことでタコには骨や甲羅のような筋肉を固定するものがなくなったため、筋肉を自由に動かしてどんな形にも変化できるようになった。しかし、フニャフニャの筋肉をうまく動かして、意図して動きを実現するためには、筋肉の隅々にまできめ細かく神経のネットワークを張り巡らす必要があったのだ。
つまり、タコの神経は体全体の筋肉をうまく協調させて動かすために作られ、それが後に外界の刺激を感じ取り判断するために使われるようになったというのだ。
おせち料理の酢だこを食べる時には、タコは賢いということを心しておきたい。