甘栗
日曜日に義父の誕生日プレゼントを買いに、妻と駅前のモンベルに行った帰り道、別院通りを歩いていると、「甘栗 金澤堂」という看板を見つけた。ガラス越しに中を覗くと、入口脇に甘栗を煎る釜が置いてある。その右手がショーケースになっている。観光客と思しきリュックサックを担いだ男女二人連れが、お店の人と話しながらお金を払っている。香ばしい香りがしてくるので、中に入ってみようかどうか迷っていたところ、「今ひとつ剥きますから食べて行ってください。」と中から声をかけられ、思わず入ってしまう。
ショーケースには「小、750円」、「中、1400円」、「大、2100円」の3種類の紙袋が並んでいる。その横には贈答用の箱を唐草模様の風呂敷で包んだ物がいくつか並んでいる。
店主の方だろう、私と同年代の50歳前後の男性が栗を向きながら色々と話を聞かせてくれた。富山県の高岡市で春日堂という甘栗屋さんを35年前から続けていて、2月1日から金沢に出店したそうだ。甘栗だけで商売になるのかいな、と思いながらお話を聞く。実は手土産に甘栗を使う人が年配の人に多いらしい。昔はデパートの食品売り場で煎りたての甘栗を売っていたのだが、今はどこも止めてしまったそうで、金沢の甘栗好きは通信販売かスーパーで売っているので我慢していたらしい。富山のお店はそんな甘栗マニアの受け皿となっていて、金沢からもわざわざ買いに来るお客さんがたくさんいたそうだ。それもあって、金沢に出店したとのこと。2月1日にオープンして、まずはPRを兼ねてご近所に煎りたての甘栗を配ったそうだ。そのおかげか、順調にお客さんも増えていて、朝に煎った甘栗を余らせたことがない。リピーターも多く、2、3日前に小松からタクシーを飛ばしてやって来て、1万円分買っていったおじいさんがいたそうだ。
剥いてもらった甘栗はたしかにほんのりと甘くて後味すっきり。何個でも食べたくなる味だ。艶を出すために水飴をかけながら煎るのでので、ピカピカとして見た目も食慾をそそる。
宵越しの甘栗は売らないのがモットーで、朝に煎った甘栗はその日に売り切ってしまい翌日には持ち越さないと、何度も話されていた。
物は試しと、「中、1400円」を買って、家でお茶のお供に食べてみた。煎りたてだからだろう、まずは皮が剥きやすい。爪を立てるとパキッと音がして切れ目が入る。割れ目を挟むように両脇がら抑えると、パカっと皮が開いく。ちょっと力を入れすぎて、一つ目は実が半分に割れてしまう。身を掘り出すようにして食べる。ふたつ目は手加減してたので少し渋皮は残ったものの壊れることなく実を取り出すことができた。うまい。3つ目はきれいにポロリと剥くことができて、そのまま口に放り込む。
お店の人は甘栗は3粒目が1番うまいと言ってた。口も甘栗に慣れてくるし皮を剥くのも3粒目くらいには上手になるので、たしかに3粒目が1番うまい、ような気がした。
そう言えば、お盆や正月など一族が集まる機会があると母は必ずスーパーで甘栗を買っていた。今度実家に行く時には手土産にしてみよう。