反脆弱性 不確実な世界を生き延びる唯一の考え方
実世界では想定外大事件が起こる。どんな頻度で、どんな規模で発生するかは予想できない。我々にできることは、想定外の大事件によって、一発で崩壊したり、死んだりしないようにしておくこと。大事件で死んでしまう個人や組織は「脆い組織」。大事件が発生しても影響を受けないようなしっかりした組織を「頑健な組織」。大事件をきっかけに繁栄する組織が「反脆い組織」。
ガラスのコップはテーブルから落ちると壊れるので脆い。ステンレスのコップは壊れないので頑健。じゃあ、反脆いとは何。生命や組織、システムを想定している。個別の生命は、寿命が来れば死んでしまう、気候変動で絶滅するので脆いけれど、種の遺伝子に着目すると気候変動などの大事件にも、誰かが生き残り、変動後に繁栄するので反脆い。個別の中小企業は経済変動で倒産するので脆いけれど、中小企業が活発に活動する経済体制は反脆い。、中小企業がショックを吸収するとともに、多様な中小企業の中から変動後の経済を担う企業が生まれるのだ。大企業ばかり、あるいは計画経済だと、状況によってはうまく適合して繁栄することもあるが、経済環境が変わって適応できなくなくなる。
脆いのか、反脆いのかの違いは、環境の大きな変動が致命的な損失に繋がるのか、莫大な利益につながるのかの違いだ。固定利率で資金調達して、固定利率で貸す銀行ビジネスは、恐慌で企業が倒産すると共倒れになる脆いビジネス。一軒家を買って借金を抱えた家計は、自然災害に対して脆い。賃貸住宅に住んで借金のない家計は、自然災害で家がなくなっても、さっさと違う場所で生活を始めればいいので頑健。ベンチャー投資家は、多くのベンチャー企業に分散して投資して、そのうちの一つでも大化けすれば莫大な利益を手にすることができる反脆いビジネス。
生き残るための指針は、リスクの予測とか期待収益率ではない、未曾有の事件に対して脆いかどうかだ。頑健なシステムならなんとか生き延びられる。反脆いシステムなら、生き残ってさえいれば莫大な利益をもたらす大変動がそのうちに起こる。
自分の家計や、職場のこと、政府の状況を、脆い、頑健、反脆いで評価してみると面白い。