じゅうぶん豊かで、貧しい社会 理念なき資本主義の末路

経済成長って本当に必要なの? 我々はどこまで豊かになれば満足するの?という疑問の答えになるかもと思い読んでみた。

 

ケインズは1930年に発表した論文「孫の世代の経済的可能性」で、技術が進歩するにつれて、単位労働時間あたりの生産量は増えるので、必要な生活物資を生産するために働かなければならない時間は減っていき、そのうちほんとんど働かなくてもよくなると言っているそうだ。

人類の誕生以来初めて、人間は真の永遠の問題に直面することになる。それは、差し迫った金銭的必要性に煩わされない自由をどう使うか、科学と複利が勝ち取ってくれた余暇ををどのように活用して賢く快適に暮らすのか、という問題である。

2030年ごろには、こんな世界が実現するとケインズは考えていたのだ。

 

1930年に比べれば、現在の農業生産、工業生産のレベルは何倍にも増えている。その頃の基準からすれば、「もう十分、働く時間を減らして、余暇をのんびり楽しもう。」となっていてもおかしくはないのだが、先進国においても労働時間は全然減っていない。逆に増えている。どれだけ豊かになっても、もっと豊かになりたい、そのためにはもっと経済成長を。という流れは変わらない。

 

著者は、地球の環境破壊、資源枯渇という面から考えてもいつまでも経済成長を追いかけ続けることはできない、よく生きるためにじゅうぶん豊かだ。というレベルを考えるべきではないかという。経済学がこれまで避けてきた価値判断に踏み込んで、何が良い生活なのかを考えるべきだという。

 

著者は良い生活を成り立たせる要素として次の7つを挙げる。

  1. 健康
  2. 安定
  3. 尊敬
  4. 人格
  5. 自然との調和
  6. 友情
  7. 余暇

全ての人がこれらの要件を満たす生活ができるようにするのが政府の役割。具体的には政府による強制的な労働時間の削減、ワークシェアリングベーシックインカムの導入、人々の消費意欲を駆り立てる広告の規制などを挙げている。 

じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路 (単行本)

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