村に火をつけ、白痴になれー伊藤野枝伝ー
伊藤野枝は、1895年福岡県生まれ。婦人解放運動家で、平塚らいてうから「青鞜」の編集、発行を引き継いでいる。日本の無政府主義運動の中心であった大杉栄と、お互い結婚している身でありながら同棲する。大杉との間に5人の子供をもうける。関東大震災後に、大杉ともに陸軍の甘粕大尉に連行され虐殺される。
貧乏なのに、好きなものを腹一杯食べて、好きな人と付き合って、金がなくなれば、親戚の家に転がり込んでご飯食べさせてもらったり、お金もらったりして食いつなぐ。気持ちいいくらいわがまま。一方で困っている人が入れば、家に住まわせたやったり、なけなしのお金を与えたりと、気持ちいいくらい我がまま、気まま。
伊藤野枝が「青鞜」時代に、当時の廃娼運動に関わる人たちが、娼婦を見下していることを痛烈にを批判した。その批判の筋道がかっこいい。
古来より、女性は男性の財産=奴隷として扱われてきた。それは、結婚して妻となるにしても娼婦となるにしても同じ。結婚して妻になるのは、夫の財産=奴隷として家事労働や性的なサービスを夫の専属でやること。娼婦となるということは、借金の担保として、性的サービスを提供する奴隷となること。妻となるのも娼婦となるのも財産=奴隷という意味では同じじ。財産=奴隷だから浮気すると妻だけが姦通罪で罰せられるのだ。
こんな論理で、当時の女性運動家たちが、売春は醜業だから無くしていかなければいけないと、娼婦たちを見下していることを痛烈に批判した。
こんな調子で、既存の制度とか仕組みを徹底的に排除する。青鞜の編集方針も「無主義、無規則、無方針」。書きたい人が、書きたいことを、好きなように書けばいい。
著者の栗原康さん独特の、ハチャメチャな文体にぐいぐい引き込まれる。