帰省

8月上旬に息子が帰省した。自動車学校に通って免許を取るために今回は帰って来た。2年ぶりに家族4人で過ごすことになったのだが、これが楽しい。特に4人揃って晩御飯を食べる時間が楽しい。娘が今日学校で何があったのか、など妻に報告していると、息子がツッコミを入れる。私が言うと、娘にキツく当たるような言葉も、息子の言葉なら娘も言い返しやすいし、深刻にならないのだろう。時々、兄妹で言い合いになることもあるけれど、そこはそれ、二人でうまく調整している。
 
大学に入ったばかりの頃は、ビール一杯でも気持ち悪くなると言っていた息子が、結構お酒を飲むことも判明した。晩御飯を食べながら、ビール、日本酒、ワインを飲んでいる。この前の日曜日には、豚ばら肉の韓国風焼き肉をしながら、二人でワインを一本空けた。思えば、これまで我が家では、お酒を飲むのは私ひとりだったので、お酒の準備をするのも私、つまみは妻に頼まないと作ってもらえないこともあった。晩御飯を食べる時には、私以外はいきなり白飯を食べ始め、私だけがダラダラと酒を飲んでいた。息子と二人で飲んでいると、やっぱり楽しい。一人で飲むのは気楽でいい面もあるが、やはりさみしかった。
 
息子と飲んで、そのままリビングで沈没する心地よさは何物にも代えがたいと思う。幸せすぎて、もう、他のことはどうでもいいと思ってしまうくらいだ。娘も声楽コンクールで歌った歌を披露してくれたり、学園祭に向けて練習しているダンスを見せてくれる。彼女は、人と気楽に話せる性格でもないくせに、友達を作るのに苦労しているくせに、目立ちたがり屋だ。将来人間関係で悩んでしまうタイプだ。
 
私は、そんな彼らを眺めながら、ひたすら食べて酒飲んで、テレビ見ている。あまり話すことはないけれど、横にいるだけで楽しい。嬉しい。4人でこんな風に1ヶ月以上過ごせるのも、今回が本当に最後だと思う。息子は9月半ばには東京に戻るだろうし、今後もこんなに長期間にわたって帰省することはないだろう。そうしているうちにも、娘が大学進学して、多分県外に住むことになる。当たり前の日常が戻ってくることがなくなるのだ。
 
記念に写真館に行って家族写真を撮ろうと思う。東京の小金井に住んでいた時に、妻と息子と立たしの3人で、吉祥寺の有名な写真館に行って家族写真を初めて撮った。そこは、あ野口英世のポートレイトを撮ったという歴史ある写真館だった。私は赤いVネックのセータを着てまだ、アメリカかぶれが抜けきっていない。33歳ごろの時。息子は1歳か2歳になったばかり。妻はほっそりしている。その時は、毎年この写真館で家族写真を撮ろうと思っていたけれど、結局、引越しがあったり、撮影に3万円も毎年払い続けるのが勿体無く感じられるようになった、七五三や入学式など節目の時にしか家族写真を撮っていない。息子ご娘も大きくなってからは、自分でスマホで撮影するくらいで写真館にも行っていない。
 
今度の週末にでも、ちょっと奮発して写真館に行ってみよう。これが最後と思っていくのもなんだか悲壮感がまとわりついて重い気持ちになるが、もうあまりこんな機会がないと思うとそれでも写真を撮っておきたいと思う。