ブルース・チャトウィン

ブルース・チャトウィンの「パタゴニア」は、学生時代に、大阪梅田の紀伊國屋書店で偶々見つけて、タイトルに惹かれて購入した。話題が盛りだくさんな割には、簡単な説明で、頭に内容が入りにくいなと思いつつ、我慢して最後まで読んだことを覚えている。読み通して見ると、どこかに旅に出たいという気持ちを猛烈に掻き立てられる不思議な読後感だった。今も手元に置いて時々読み返している。奥付を見ると1990年7月10日発行の初版第1刷。その後も、「ソングライン」、「ウィダの提督」、「ウッツ男爵」を読んだ。「黒ヶ丘の上で」は途中まで読んだ。
 
どの著書も、訪問した土地から発掘された化石や遺跡、人々の歴史や、遭遇した人たちのエピソードが縦横無尽い織り交ぜられるていて、どこまでが事実で、どこからがフィクションかわかりにくいが、著者に身を委ねて読み進めると大変心地好い時間に没頭できる。
 
このニコラス・シェイクスピア著「ブルース・チャトウィン」は、その名の通りブルース・チャトウィンの伝記。800ページを超える大著だ。これまで、本の著者紹介でしかすることができなかったブルース・チャトウィンの生涯を詳細に知ることができる。
 
チャトウィンは1940年生まれで1989年、49歳で亡くなっている。大学を卒業してから数年間、美術品などのオークションで有名なサザビーズで働き、オークションにかける美術品の調査とカタログ作成を担当、本質を捉えてシンンプルに表現する文章は、その中で培われたそうだ。サザビーズの幹部として将来を期待されながらも、美術品業界の裏の世界を垣間見て嫌気がさして退職する。
 
その後は執筆活動に専念するが、なかなか思うような作品が仕上がらない。何度も書き直すが編集者の評判は芳しくない。食うために3年間、サンデータイムズの記者も経験している。記者の経験が、わかりやすい文章を書く修行になったようだ。
 
彼の著書が大好きな人には、あの不思議な雰囲気漂う文章がどこからきたのか、もう勘弁してくれというくらい詳細に知ることができるので、一読の価値あり。

 

ブルース・チャトウィン

ブルース・チャトウィン

 

 

 

パタゴニア (河出文庫)

パタゴニア (河出文庫)