予測不能の時代 データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ

「データの見えざる手」から5年、矢野和男さんの新著がでたので早速読んでみた。
 
データの見えざる手では、従業員ひとりずつにセンサーをつけて、各人の体の動きから活動量をリアルタイムで記録し、誰と誰がどのくらいの時間会っていたかも記録することで、社内の人の繋がり方も記録。そこから、人の活動量には限界があり、活発に動いた期間の後には、静かな期間が来ること、誰かと親しくなるとどんどん親しくなったり、何かのきっかけで疎遠になると、どんどん疎遠になる傾向があることなどを明らかにしてくれた。
 
今回の著書では、データを解析しどう応用するかまで進む。具体的には、予測不能な将来に対応するためには幸せな職場が必要であること、幸せな職場とななんぞやということをしめす。
 
幸せな職場には次のような特徴(頭文字をとってFINE)がある。
Flat(均等):つながりが均等
Inprovised(即興的):5分間会話が多い
Non-verbal(非言語的):会話中に体がよく動く
Equal(平等):発言権が平等 

 

こうした組織は未知の問題が降りかかってきても、それぞれのメンバーが問題に果敢に対応するようになるという。
 
道は見つかると信じている
現実を受け止めて、行動する
困難には立ち向かう
前向きなストーリーをつくる
 
予測不能な事象に対応するには、とにかく前向きに行動することが大事であり、理屈をこねて説明できないのでやらないというのでは座して死を待つようなもの。
 
著者がいうには、未知の問題に対応するのは、とかく面倒なことである。面倒なことをするためには、まず従業員が安心して行動できるような職場の雰囲気が必要で、そんな幸せな職場の特徴がFINEなのだ。
 
なるほどと思ったのは、FINEの中のInprovised(即興的)の項目。部下であった頃から職場内のあらたまった会議が大嫌いで、週一のただ日程を報告するだけの会議などは時間の無駄だと思っていた。用があれば個別に言えばいいし、日程はシステムで確認できる。もっともらしい顔をして30分以上も時間使うのが嫌だっったので、自分の権限が及ぶ範囲でそんな会議は廃止してきたのだ。
 
用があれば、思いついた時に当事者同士が会話してしまった方が、素早く対応できる。お互いの状況を慮って、時間ができた時にまとめて打ち合わせしようなどと考えていると、一歩遅れる。
 
今は部下には、何かあったら説明資料も何もいらないからとにかく教えてくれと言ってある。おかげで、みんな報告が早いのは助かる。私の横に置いてある椅子に座ってもらって口頭でまずは説明してもらう。私はどんな内容でもとにかくニコニコしながら聞くようにしている。おかげで短い報告が次々上がってくるのはありがたい。
 
Equal(平等)も大事。職場の上司の立場になって思うのは、意識して部下に話をさせないと、会議といいながら気がつくと自分一人で話しているのだ。良かれと思って自分の考えを話すと、私以外の人が黙って聞くだけの会議になりがちなのだ。できるだけ頼りないアホみたいな顔して、みんなの考えを聞くようにしている。
 
予測不能な未来へ対応するにあたっては、ビッグデータとそれに基づくAIの分析は原理原則からいって役に立たないという。なぜならビッグデータは過去の結果を集めたものにすぎないからだ。
 
その後、予測不能な未来を乗り切るためには「易」の考え方も役に立つという話に展開。変化のわずか兆しをつかむことが重要であり、その兆しへの対応の仕方がパターン化され「易」にまとめられているという。易のお告げにしたがって、従来のやり方にとらわれずに行動することが、未来に対応することに役に立つという。
 
最初はえっ、と思ったが、考えてみれば、そもそも予測不能なんだから誰もが納得するような理論や説明なんぞあるわけがない。わずかな兆しをつかみ、どうなるか予想して自分の判断にかけるしかないのだ。その一歩を踏み出す時に「易」が役に立つんだろう。
 
著者は、この本の内容を元に幸せを増進するためのアプリも開発している。先週からスマホに入れて試しているが、毎朝ほんの数分でも、一日どう過ごすべきかに、アプリのお告げを元に考えてみる、意識を向けるだけで、少し行動が変わるような気もする。活動量も計測されるので1日の振り返りもできる。
 
しばらく続けてみる。