下流喰い

消費者金融の看板が駅前や、繁華街で林立している風景や、テレビでCMがたくさん流れていることも最近は慣れてしまいましたが、一体どれくらいの人が、消費者金融のお世話になっているのかと思っていました。


04年で、利用者は2000万人を超え、市場規模は20兆円、信用供与枠では73兆円、多重債務者は300万人以上になるそうです。


現在、貸金業の上限金利をどうするか、国会で審議されています。利息制限法の上限20%と出資法での上限29.2%の差(グレーゾーン)をなくして、20%に一本化されるようです。現状では、大手の消費者金融や、クレジットカード会社でも25%以上の金利を取っているのに一律で20%に規制されると、借りられなくなる人もたくさん出てきて、闇金融に流れる人がたくさん出てくるのではないかとも思っていました。極端な話、上限金利を設定する必要もない、市場に任せておけばいいと思っていました。


この本を読んで少し考えが変わりました。お金に困っていればいるほど、高い金利を受け入れざるを得ないし、高い金利を受け入れる程に、ますますお金に困る状況になる、悪循環に陥ってしまうので、自由放任ではとんでもないことになりそうです。


多重債務に陥るパターンは、

  • 最初は少し足りない分を補うつもりで大手の消費者金融から借りる。
  • 借り入れが定常化する
  • 借入額が少しずつ増える
  • 返済に困り他社も借りる
  • 大手では借りられなくなり、高い金利で中小の業者から借りる
  • ますます返済に困り、もっと高い金利闇金から借りてしまう。

大手→中小→闇と段階を追って、身包み剥ぎ取られるパターンになっています。

借りたお金を返せないということは社会的な死を意味しますので、借りた人は必死です。一番返済の見込みが無い、たくさん借りている人ほど、弱みにつけこまれて、天文学的に高い金利を受けいれ、ますます状況は悪くなるので上限金利の規制は必要だと思いました。必死な状況で、お金はいくらでも払ってもいいと思ってしまうのは、変な例えですが、医療費を自由放任にしたらどうなるかというのと、状況は似ているかもしれません。


ただ、上限金利の規制だけでは、闇金融に流れる人が増えるだけなので、自己破産の仕組みと、生活費に困ってどうしてもお金が必要な人に対してどんなセーフティネットを用意するかもセットで考えないとうまくいかないと思います。

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)

下流喰い―消費者金融の実態 (ちくま新書)