無形資産が経済を支配する

経済の停滞と格差拡大が長期に続いているのは何故なのか? この問題に対して、著者は、「投資における無形資産の重要性が増大しているから。そして無形資産の重要性が増しているにもかかわらず、既存の会計制度では無形資産の実態を把握することができず、ま…

道徳感情論

4年ほど前に購入して、何度も読み進めようとしたものの、毎回、100ページを過ぎたあたりで挫折しほったらかしになっていた。今回は不思議と調子よく読み進められた。 みんなが自分の利益のことだけを考えて商売をすることが、結果として社会全体に必要な物を…

コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画

コロナショックで、まず、飲食、ホテル・旅館、観光業の売上が一瞬にしてなくなり、ローカルビジネスが大打撃を受ける。それにより、耐久消費財の需要が大幅に落ち込み、自動車、家電などのグローバルビジネスも危機的状況に陥る。そこから、金融危機になり…

ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀

新自由主義経済学は、格差と引き換えに経済成長が進むことを約束していたが、現在は、成長率の減速と格差の拡大が同時に進行する状況にある。これを著者は「スタグネクオリティ」と呼び、現在の市場経済が解決すべき問題と位置付ける。 著者は「スタグネクオ…

建築の東京

出張で東京に行くと、東京駅周辺の変貌ぶりに驚く。特に丸の内側には超高層ビルが林立し、東京駅を見下ろす壁のようになっている。湾岸ではタワーマンションも次々と建設された。私が東京に住んでいた1990年代の印象とは全然違う。鉄道の新路線が開通し…

そして、みんなバカになった

橋本治が好きかどうかと聞かれると、ものすごく好きという訳ではない。なんでも根っこからひっくり返して考え始めるし、思いもかけない細かいところにこだわるので、いちいち説明が面倒くさいのだ。でも、1年に1度くらい、無性に読みたくなる。特に、これか…

宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

スティーブ・ジョブズが禅に入れ込んでいたのは有名な話だ。アップル製品の無駄を削ぎ落としたシンプルなデザインは禅の考え方に通じるとも言われる。また、ある日本人のお坊さんを師匠のように慕い自宅に招いて様々なことを相談したり、1991年にヨセミテの…

迷うことについて

「隔たりの青」というタイトルのエッセイと、彼女の家族や恋人、友人のことをふりかえるエッセイとが交互につづられる。東欧から祖母がアメリカへ移民したあとの波乱の人生、ネバダの砂漠の一隅に引きこもる恋人を訪ねたこと、友人が自殺したことなど。 衝撃…

執念深い貧乏性

栗原康さんの本には中毒性がある。粗野でガサツな言い回しで、一見何ら関係のない体験談、例えば実家で飼っていた猫がおじいさんに捨てられたけれど、3日ほどで戻ってきた話、長渕剛の「Captain of the ship」歌詞の引用が続いて、安心していると話が急展開…

旅の効用 人はなぜ移動するのか

この本の著者、ペール・アンディションはスウェーデンの人。若い頃からバックパッカーとして旅を重ねて、旅をテーマにした小説やエッセイを書いたり、旅行雑誌を発行したりしている。インドのムンバイが好きで何度も通っている。ムンバイに滞在して市場や路…

インド哲学10講

「ある」、「ない」。「〜になる」、「〜でなくなる」。「存在」、「非存在」についてのインド哲学各流派の考え方を紹介する。 主要な論点は、まず、何も無いところから、何かが生じて、そこから俗世の諸々がそのように生じるのかということ。 ブラフマンが…

村に火をつけ、白痴になれー伊藤野枝伝ー

伊藤野枝は、1895年福岡県生まれ。婦人解放運動家で、平塚らいてうから「青鞜」の編集、発行を引き継いでいる。日本の無政府主義運動の中心であった大杉栄と、お互い結婚している身でありながら同棲する。大杉との間に5人の子供をもうける。関東大震災後に、…

南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー

ほぼ、週末ごとにインド料理屋さんに通っていたら自分でも料理したくなってきたのでレシピ本を買った。「だいたい15分」に惹かれてこの本にした。 読んでみると、玉ねぎとトマトをにんにく、生姜、コリアンダー、クミン、ターメリック、チリペッパーと蒸し炒…

ゾミア 脱国家の世界史

年末年始に ジェームズ・C・スコットの「反穀物の人類史」を読んで、国家や、国家成立の基盤となった穀物栽培についての考え方をひっくり返された。 「反穀物の人類史」の内容を簡単に紹介すると、 米や小麦などの単一の穀物を栽培する農業が始まり、灌漑施…

家畜化という進化 人間はいかに動物を変えたか

1940年代のソ連ではメンデルの遺伝学はブルジョワの考え方であり反動的であるとされていた。ソ連の遺伝学者、ペリャーエフはメンデルの遺伝学を否定することを拒否していたため1958年になってシベリアへ左遷される。ペリャーエフはモスクワから遠く官僚の目…

文喫は楽しい。

昼飯を食べて息子と別れてから、六本木の「文喫」という本屋さんに行った。2018年12月に開業した入場料をとる本屋さんで、店内に喫茶スペースがあって、お茶とコーヒが無料。本棚から好きな本を選んで、お茶しながら読むことができるのだ。 まずは、受付で入…

ソビエト・ミルク ラトヴィア母娘の記憶

20年ほど前、とある電機メーカーのシリコンバレーの子会社へ派遣されていた時の同僚にラトビア出身の人がいた。アレックスという当時30代前半の男性で、私と年が近いこともあり、屋外の喫煙所でタバコをふかしながら、お互い不自由な英語でボソボソとよく…

玉ねぎの皮をむきながら

ドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラスが、子供時代から代表作「ブリキの太鼓」を書き上げるまでを回顧する。この本が出版された2006年にグラスは第2次世界大戦の末期にナチスの武装親衛隊員だったことを告白して、マスコミで大騒ぎになる。この本でも…

数学読本1 数・式の計算 方程式 不等式

今年の初めに1ページ目を開いてから1年、ようやく読み通した。途中で2ヶ月間ほど放置していた時期もあったけれど、毎日1ページでも、1問でもいいつもりで少しずつ進めて、なんとか最後のページまで到達した。明け方の居間のコタツで、ひとり最後の問題を…

蟹の横歩き ヴィルヘルム・グストロフ号事件

1945年1月30日の夜、東プロイセンのゴーテンハーフェン(現在のポーランド、グディニャの港から、ヴィルヘルム・グストロフ号が出航する。船にはソ連軍に追われるドイツの避難民がすし詰め状態で乗船していた。乗船者数の確かな記録はないが1万人を超えてい…

線量計と奥の細道

ドリアン助川さんと言うと、新聞に連載されていた人生相談の印象が強くて、今でも気になる人。著書を見つけると手にとって確認する。 この本は、芭蕉が奥の細道で旅した道を折りたたみ自転車で辿る旅行記だ。時は2012年、東日本大震災の1年半後、放射線の線…

消えた国 追われた人々 東プロシアの旅

東プロシアは、かつてのドイツ帝国の東の端、現在のポーランド、ロシア、リトアニアにまたがる地域のこと。多くのドイツ人が住んでいたが、第2次大戦後ソ連側の支配となったことから、ほぼ全てのドイツ人は追放された。哲学者のカントは東プロシアのケーニヒ…

初期仏教

仏教は2500年前、紀元前5世紀ごろにインドで釈尊によって説かれた。その教えは釈尊の死後は声に出して語られることで伝承されてきたが、紀元前後に各地に広まった諸派が集まり、文字に書き残すようになる。 初期仏教とは紀元前の口頭伝承で伝えられていた仏…

原子力時代における哲学

第2次大戦が終わって間もない1950年代に「原子力の平和利用」という考え方が生まれ、広く世界に浸透する。時を同じくしてイギリスで世界初の原発が稼働を開始する。当時は核兵器は反対だけど、原子力の平和利用は賛成だという人が知識人も含めて大多数だった…

暴力と不平等の人類史 戦争・革命・崩壊・疫病

農業や牧畜が始まり、生きて行く上で必要最低限必要な物資を上回る生産が可能となって以来、定常状態では人々の間の経済的な不平等は拡大し続けている。例外的に不平等の格差が縮まったのは、次の4つのケースだと著者は言う。 国家あげての総動員体制での戦…

じゅうぶん豊かで、貧しい社会 理念なき資本主義の末路

経済成長って本当に必要なの? 我々はどこまで豊かになれば満足するの?という疑問の答えになるかもと思い読んでみた。 ケインズは1930年に発表した論文「孫の世代の経済的可能性」で、技術が進歩するにつれて、単位労働時間あたりの生産量は増えるので、必…

鈴木幸一さん

私の大好きな経営者。今月の日経新聞、「私の履歴書」で連載中。 高校にはほとんど行かずに、昼間は上野公園の博物館や映画館で時間を潰して何事もなかったように家に帰ったとか、大学を卒業しても就職するわけでもなく、コンピュータ関係の翻訳のアルバイト…

経済と人類の1万年史から21世紀を考える。

やぶからぼうですが、「経済って成長し続けなきゃいけないものなの?」という疑問が、心の奥底にわだかまっている。私自身は1966年生まれで、日本の高度成長真っ只中。1973年のオイルショックで高度成長に区切りがついたものの、バブル崩壊まで成長は続く。…

スハイリ号の孤独な冒険

1968年に世界で初めてのヨットの単独無寄港世界一周レースである「ゴールデングローブレース」が開催された。イギリスを出発して喜望峰、オーストラリア、ニュージーランド南側を通って、マゼラン海峡通過後は大西洋を北上してイギリスに戻るコース。GPSは存…

地元がヤバい!と思ったら読む 凡人のための地域再生入門

東京の企業で働いていた主人公が、母の頼みで地元の商店街での実家の商売を廃業しようとするところから物語は始まる。廃業の手続きのため週末ごとに実家に帰っているうちに、地元に残って飲食業で成功した同級生に誘われて、実家をリノベーションすることを…