ラッセル幸福論

バートランド・ラッセルが一般の人向けに書いた、どうやったら幸福に暮らせるのか、について、非常にわかりやすく、実践的に解説した本。
 
まずは、不幸の原因を指摘する。
 
・どうせ人は不幸にならざるを得ないのだというような、諦めた見方。
・他人に負けたくない、ライバルに勝ちたいという競争に明け暮れる態度
・退屈を毛嫌いし、興奮を追い求めること
・働き過ぎ、勉強しすぎによる疲れ
・他人と比較して、羨む妬み
・幼少期に親や先生から刷り込まれた罪の意識
・周り人たちが共謀して、私を陥れようとしていると感じる、被害妄想
・世間体を気にし過ぎる気持ち
 
ざっくりまとめると、他人と比較したり、世間体を気にしたり、自分はダメなんだと思いつめるなど、意識を自分のことばかり向けて一人でうじうじ考えていると不幸になるよという。
 
次に幸福ななるために心がけるべきことをあげる。
・何にでも熱意を持って取り組むこと
・愛情。人から愛情を十分に受ける、または、他人に愛情を注ぐこと
・家族 家族との良好な人間関係を結ぶ
・仕事 建設的な仕事を続ける
・仕事以外のことにも、いろんなことに興味を持つこと
・適度に努力すること。適当なところで諦めること。何事もほどほど=中庸が大事
 
つまり、自分の関心を、自分の外部に振り向けて、外部と関わりを持ち続けること。
そのことを、ラッセルは次のように壮大に表す。
 
「魂の偉大さを持ちうる人は、心の窓を広くあけて、宇宙の四方八方から心に風が自由に吹き通うようにするだろう。彼は、自分自身を、生命を、世界を、限りある身の許すかぎり、あるがままに見るだろう。人間の生命の短さと微少さをわきまえながらも、同時に、個人の精神の中には、既知の宇宙に含まれている価値あるものが全て集約されていることを悟るだろう。また彼は、世界を映す鏡のような心を持った人は、ある意味では、世界と等身大に偉大になる、ということを知るだろう。環境の奴隷に付きまとうもろもろの恐怖から解放されたとき、彼は深い歓喜を覚えるだろうし、外面的な生活にどんなに浮き沈みがあろうとも、心の奥底では幸福な人間でありつづけるだろう。」
 
心の窓を広くあけて、世界を映す鏡のような心を持つと、世界と等身大になる。なんて、仏教っぽい物言いでさえある。
 
わかりやすく、ドライで、実践的な内容なので、ドツボに嵌り込んでにっちもさっちも行かなくなった、大学生の頃の自分に読ませてやりたい。
幸福論(ラッセル) (岩波文庫)

幸福論(ラッセル) (岩波文庫)