森のバロック
この3連休で子守の合間に読みました。15年前に買って積んでいた本です。何度か読み始めて途中で挫折していたはずなのに、今回はちょっと手にとったところ一気に引き込まれて読んでしまいました。
南方熊楠については学生の頃興味をもったことがあって、伝記を何冊か読んだり、全集を読んでみたことがあります。しかし、熊楠の様々な話題を縦横無尽に綴っていくスタイルに幻惑されて、何を言おうとしているのかよく理解することができないままでいました。この本は民俗学者であり、生物学者であり、自然保護活動家でもあった南方熊楠が本当のところは何を考えていたのかを解説してくれます。少しわかったような気になりました。
燕の巣の中にある石には、目の病気を治したりお産を軽くする効果があるという燕石の伝承を題材に、神話的思考について書いた「燕石の神話論理」が面白かった。
熊楠はまず伝説や神話は、複数の論理軸を、さまざまなやりかたで組み合わせてつくられており、それが伝えようとしているメッセージも、重層的な豊かさをもっている。だから、どんな小さなものでも、神話的思考のつくりだすものにたいして、この神話の意味はこうであるとか、この神話はこれこれの起源をもっているなどといった断定をくだすことは、神話的思考のつくられ方から言って、あまり意味を持たないのだ、ということをあきらかにしている。
燕につながるイメージを羅列すると、
燕→春を告げる鳥、冬は水の中で貝になっている。→水→濡れている→目→
飛んだまま虫を捕まえる→貪欲、強い繁殖力→魔力
燕石の伝承の裏には燕に関する様々な連想がかくされているので、伝承の唯一の意味とか起源にとらわれるのでなく、それをそのまま受け取ることが大事だとのことです。

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