1989 世界を変えた年

改めて振り返ってみると1989年は立て続けにいろんなことがあった年。


1月に昭和天皇が逝去し、アメリカではブッシュ(父)が大統領に就任
4月に消費税3%が導入され
6月に中国で天安門事件が発生、ポーランドでは東欧圏で初めての自由選挙が行われ「連帯」が圧勝
11月9日にベルリンの壁が崩壊し、チェコスロバキアビロード革命が始まる
12月にルーマニアチャウシェスク大統領が処刑される。日経平均株価が38,915円(終値)の最高値をつける。


私は大学3年生。交通量調査のアルバイトをしながら、夜中に天安門事件の経過をラジオで緊張して聞いていたことを思い出す。でも、ベルリンの壁が崩れたことについては、ニュースで見ているはずなのだけどあまり印象にない。


著者はニューズウィーク誌の記者。当時東欧地区の担当で、1989年の東欧の各国の動きを間近で取材し、ベルリンの壁崩壊を東ドイツ側から目撃した人。この本はベルリンの壁崩壊につながる1989年の東欧諸国の動きを再現していきます。


著者が言いたいことは、ベルリンの壁崩壊を「資本主義陣営が共産主義陣営に対して優位であったから歴史の必然だ。」と単純に割り切ってしまうと見えなくなってしまうことがある。表に出てこない関係者の節度ある動きを忘れてはいけない。特にドイツのコール首相とアメリカのブッシュ(父)大統領の動きを評価します。ドイツはハンガリーの改革派と秘密裏に接触し、ハンガリーオーストリアとの国境を開放し、東ドイツから多くの避難民が西側に流入する場合の対応について入念に準備していたこと。アメリカは東欧諸国が崩壊する過程で前面に出ることを控え、ソ連や共産政権を無駄に刺激しないようにし、新しい体制に向けたバックアップに徹したことを評価しています。


そのような動きに対比させて、ブッシュ(子)政権の動きを取り上げます。自国の正義を疑うことなく、悪の枢軸を決めつけて闇雲に戦争に突入。戦後の新体制をどうするかの考えもなく戦争から撤退し混乱を長引かせたと批判します。


ジャーナリストが書いただけあって、現場に立ち会った人しか書けないようなエピソード満載で面白いです。

1989 世界を変えた年

1989 世界を変えた年