ユートピアの崩壊 ナウル共和国
ナウル共和国は南太平洋にある周囲19Km程度の小さな島。長年鳥の糞が堆積してできた島。堆積した鳥の糞はリン鉱石として、肥料の原料になる。ナウル共和国は1967年に独立し、その後リン鉱石の輸出で莫大な収入を得る。その収入をオーストラリアなど海外の不動産に投資するとともに、国民にも山分けする。国民の医療費、教育は全て無料。政府は各家庭の家政婦の費用も負担したそうだ。働く人、家事をする人は誰もいなくなり、日がな一日高級車で島の外周道路をぐるぐる回って過ごしていたそうだ。
しかし、ピーク時には年間200万トンあった採掘量も、1990年代に入ると徐々に枯渇し、2005年には5万トンにまで減少する。そうなるとあっという間に国家財政は破綻する。海外に投資したお金は、怪しげな人達に巻き上げられてほとんど戻ってこない。なんとか収入を得ようとマネーロンダリングのためのペーパーカンパニーの拠点となったり、パスポートを売り出したりとありとあらゆる手を使う。人々は、働くことを忘れてしまい、食料を調達するために魚釣りに頼る。
おとぎ話のような本当の話です。リン鉱石が20年程度で枯渇することは最初からみんなわかっていたのに、誰も何にもしないうちに予想通りの結末を迎える。なんて愚かなと思ったけれど、よく考えてみれば、私自身も似たようなもんだ。
ユートピアの崩壊 ナウル共和国―世界一裕福な島国が最貧国に転落するまで
- 作者: リュック・フォリエ,Luc Folliet,林昌宏
- 出版社/メーカー: 新泉社
- 発売日: 2011/01/28
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (11件) を見る