ものが壊れるわけ

ものがいつ壊れるか=どんな時に壊れるかについては、人は経験を通して学び、壊れることを避ける方法を身につけてきています。高い所から床にガラスのコップを落とすと割れることがわかっていれば、落とさないようにしたり、あらかじめ床にマットを敷いておくなどの対策をしてきました。しかし、「なぜ」壊れるのかという問いには最近まで答えることができなかったそうです。「なぜ」がわからないので、どうやったら最高に強靭な鉄になるか、についてはいろんな微量元素を注入して試してみるしかありませんでした。


著者は、化学結合量子論位相幾何学をつかって「なぜ」壊れるかを研究しているそうです。壊れやすさは物質の電子の密度、配置が関係しているので、うまく配置するような物質を添加してやれば、望みどおりの強さの物ができるはずです。


難しくてよくわからない部分が多かったのですが、印象に残った断片をあげると、

  • ガラスは引っ張られる方向の力がかかると壊れるので、表面にあらかじめ圧縮する方向の強い力がかかるように処理しておくと壊れにくくなる。圧縮する方向の力をかける方法は熱処理や化学薬品での処理がある。ただしこのように処理されたガラスが割れる時には、力のバランスが一気に崩れるので爆発的に粉々になってしまうそうです。
  • タイタニック号が氷山にぶつかって簡単に船体に大きな穴があいてしまったのは、鉄に硫黄分が混ざっていたこと、低い水温で船体の鉄が脆くなっていたことが原因。金属はどんなものでも急激に冷やすと脆くなるそうです。
  • 物の強さを測る概念として、靭性と脆性という考え方があります。靭性とは、変形しつつもばらばらにならない性質。粘り強さ。脆性とは、固いけれど衝撃でバラバラになってしまう性質です。日本刀は刀身には粘りのある軟鉄を使い、刃の部分には脆いが固くて切れ味鋭い鋼を使い、この二つの性質をうまく組み合わせています。
  • 結晶のなかの分子同士の平面状の繋がりがずれて変形することが、靭性であり、平面状の繋がりが剥がれてしまうことが、脆性となるそうです。壊れにくい物質にするためには、電子の配置、密度を調整して結晶平面が剥がれにくくなるようにすればいいようです。

ものが壊れるわけ

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