芸術の売り方−劇場を満員にする売り方−

オーケストラやオペラなどの芸術団体がどうやってたくさんの観客を呼び込み、収入を得るか、を丁寧に解説します。至極当たり前のマーケティングのセオリーを芸術を売り込むことに適用していきます。要は、顧客の声に丁寧に耳を傾けて、顧客の立場に立って最高の体験を供給することに尽きるのですが、アメリカの団体を中心に豊富な事例を挙げるので具体的でわかりやすい内容になっています。ロサンゼルス交響楽団のカジュアルフライデーコンサート、高齢者に向けたイギリス文化振興協会の「お出かけプログラム」。これはコンサートのチケットとタクシーの大幅割引チケットをセットにして高齢者がコンサートへ出かけやすくする仕組みです。デラウエア交響楽団のCDタイプのパンフレット。などなど。


本書の中でなんども著者が強調するのが、定期会員の減少とシングルチケット購入者の増加へ対応すべきということです。娯楽の選択肢が増えているため、年間を通じて一括した公演チケットの購入はファンにとって相対的にリスクが大きくなっていることや、好みでない公演のチケットも含めて購入するこため定期会員は減少傾向で、シングルチケットの割合が増えており、芸術団体はシングルチケット購入者の需要を呼び込むことに注力すべきと説きます。


私もある楽団の定期会員になって1年でやめてしまいました。最初の3回ぐらいまでは楽しかったのですが、自分の好みの演目でないこともあることや、仕事の都合でどうしても行けないことがあること、子供を誰かに預けないといけないことが、回を追う毎に負担になって、2年目の更新はしませんでした。


生で演奏聴いてみたいという人は多いのではないでしょうか。でも、なんとなく自分とは関係ないと思わせるものが、「クラシック音楽」という呼び方にありあります。音楽評論家のアレックス・ロスの言葉

クラシック音楽>なんて名前がついているから評判がわるくなる。まったく傑作だね。誇大広告とは正反対の意味で大傑作だ。ベートーベンも真っ青だろう。彼の精神を受け継いだ音楽の息の根をとめているんだから。・・・人々は<クラシック>と聞いただけで<死んだもの>だと思っている。・・・・雑誌にはポピュラー音楽の欄があり、クラシック音楽の欄がある。つまり、クラシック音楽はポピュラーじゃない音楽だと言っているわけだ。クラシック音楽の衰退がよく言われるが、無理もないね。

芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング

芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング


個人で活動するクラシック音楽家の活動を支援する「ムジカー100」というサイトを金沢在住の音楽家の方が運営しています。音楽家と普通の人との間を結び付けたいと、いろいろと模索されています。あなたのご近所にも結構たくさん音楽家がいますよ。
ムジカー100:http://musiker100.com/