福井県鯖江の塗師屋さん山本英明さんが、漆器をとりまく、あれやこれやについて率直に語ります。語り言葉で書かれているので、越前訛りを想像しながら読むと更に臨場感が立ち上がります。
おらは自分の勘違いに気づいた。品物を買ってくれるのは素人さんで、素人さんは職人の技術を買っているわけではない。おらの技術がすごくて、どれほど漆器をプラスチックに近づけても、そこには人間味もないし温かみもない。これでは、お客は買ってくれない。
技術というものは、ものごとをよくするためだけでなく、悪くするためにも使われる。特によくないのは「技術のホラ、技術自慢」
「これ難しい技術で作った仕事やで、こうてくれ」
というものには、ろくな品物がない。機械の部品では製品の精度は大切やけど、一人の人間が日常の生活で使う道具が技術をウリにするということにはあまり意味がない。
こうして、自分が器をつくるなら、これだけの仕事はしておきたいという品を作り始めます。漆器が売れなくなったことの根っこには、景気がいい、悪いということ以前に、使う人のことを考えない技術への自己満足があるのかもしれません。
福井の人、そんな何人も知っているわけではないのですが、腹が据わった覚悟、自分が決めたことは喧嘩してでも貫く頑固さがある人が多いような気がします。

- 作者: 山本英明
- 出版社/メーカー: 角川書店
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