日本事物誌1

チェンバレンは明治6年、23歳の時に日本に来た。大学や兵学校で教えながら日本語、日本の古典を研究し、明治44年に健康上の理由で日本を離れる。日本事物誌はチェンバレンが海外から日本に来る人に向けて書いたガイドブックで、日本の事物をアルファベット順に解説する。


日本人について、清潔で親切で趣味がいいと評価するが、構想力がないと感じていたようだ。

要約すれば、日本人の間でしばらく住んだ人々の判断を平均すると、貸し方側(長所)は、三つの主要な項目に分析することができるように思われる。すなわち、清潔さ、親切さ、洗練された芸術的趣味、である。借り方の側(短所)も三つの項目に分析される。すなわち、国家的虚栄心、非能率的修正、抽象的概念を理解する能力の欠如、である。

文学におけると同様に、美術においても日本人は総合的に偉大なものを作るのに必要な素質も、幅の広い人生観もないように思われる。一言にして言えば、日本の美術は将なるものにおいて偉大で、偉大なるものにおいてしょうである。

盆栽や根付、漆器などの工芸品の細やかな細工、技術を評価するが、抽象的な概念を理解したり表現する能力に欠けていると感じたようだ。全体構想なしに技術のタコツボにはまり込んでしまう。全体の絵図がかけないのは、今も全然変わっていない。全体構想なしなやたらと個別の技術的課題の解決に猛進する。


チェンバレンは「武士道 新宗教の発明」と題した項目で、明治以降の天皇を中心とした国家体制を官僚が作り上げた新しい宗教と位置づけ批判的に記述する。

彼らの一人は最近、私にこう言った。「それは本当でないと知っているのだが、信じているのです。」


日本事物誌 (1) (東洋文庫 (131))

日本事物誌 (1) (東洋文庫 (131))