地域主権の近未来図

将来、国の財政が厳しくなり、公務員を減らさなければならないとなれば、真っ先にターゲットとなるのは県だろう。基礎自治体である市町村は、住民に一番近い行政組織として必要である。国は、国でなければできない仕事、防衛、外交などがあり、なくなることはない。しかし、県でないとどうしても出来ない仕事などない。国の出先機関と県どちらをメインにして残すかという話になるだろう。そうなったときに、国は、身内の職員を切るようなことはしない。国の出先機関を中心として道州制の組織を組み立てて、県はそこへ吸収されるのではないかと思う。今の状況では財源、権限も押さえているのは国であり、県が抵抗するのは難しい。そう簡単に国が税源を地方を移管することはないだろう。省庁はもちろん、国会議員だって自分たちの権限を削るようなことには反対だろう。


では、どうすればいいのか?県が生き残る可能性があるとしたら、自らの行政能力を磨き上げていくことしかないと思う。今の制度の枠内で、国ではできない事業を県が独自に実施し、住民や市町村を味方につけることだ。
独自性を出すためには事業のメリハリをつけなければならないが、既存の事業を廃止するのは、新しい事業をはじめるよりも多分ずっと難しい。国の事業仕分けは、お白州に引っ立てられた職員は大変だが、色々なしがらみから止めたくても止められなかった事業をばっさりと廃止できるので、省庁側もうまく利用したのではないだろうか。


住民に議論に参加してもらうことで、問題になるのはサラリーマンに関心をもってもらえないことだ。県から補助金をもらっている人たちの声ばかりが大きくなってしまう。民間企業に勤めるサラリーマンにとっては、県のやっていることなどほとんど関心がない、できるだけ余計なことをしないで、費用をかけず税金を安くしてくれというのが本音だろう。


サラリーマンに自分に関わることとして関心をもってもらうためには、事業と税金をセットにして提示するのが効果的だ。本書の中では、「どうしてもやらなければいけない仕事をやるには、これだけおカネがかかるので、その分を税として集めますよ」という意味の「量出制入」という言葉がでてくる。事業と税金をセットで提示することで、

・真剣に地方自治について考える契機となる。

・自由に税率を決めることで、自治体ごとの政策の多様性が生まれる。

などの効果がある。


地域主権への向け国へ税源委譲を働きかけることが必要なのはもちろんだが、今できることを先ず始めるべきだろう。

地域主権の近未来図 (朝日新書)

地域主権の近未来図 (朝日新書)