毛沢東 ある人生 下

毛沢東の伝記の後半。長征で延安にたどり着いてから以降のお話。日本、国民党との闘いを経て、中華人民共和国を建国、大躍進運動文化大革命、アメリカとの国交回復、1976年の死去。


上巻と同じく淡々として語り口で退屈に感じることもありますが、語られている内容は物凄いお話。特に大躍進から文化大革命の内容は凄まじい。大躍進政策とは、アメリカ、イギリスの追いつくために、1958年から1960年に行われた農業と工業の大増産政策。鉄を増産するために農民たちが、農業そっちのけでレンガで炉をつくって、木を切り払って木炭をつくり、家で使っていた鍋釜などのくず鉄を原料にして鉄の増産に取り組んだそうです。しかし出来たのは素人が作った使えない鉄ばかり。農業も技術を無視して無理を重ねたため、その後生産が落ち込み飢饉へ、餓死者は2千万人〜3千万とも言われています。


党がかなり無理目の生産目標を掲げると、党の地方組織から見込みの数字が送られてきます。その数字が目標値を2倍3倍上回る実体とはかけ離れた数字。その数字を受けて、党中央がさらに生産目標の引き上げや前倒し達成を指示します。そうすると・・・・という循環で自分で自分の首を絞める展開。どこぞの組織でもありそうなお話。


今の中国を理解する上で参考になると思ったのは
1 共産党が中国国内で合法化され急激に党員数を増やすことができたのは、日本の侵略に対抗するという大義があったから。それがなければ多分国民党に匹敵する勢力になることはなかった。党にとっての相当の成功体験であるだけに、今後も何かあれば、反日云々ということが言われるのだろう。

2 共産党が権力を握ってから、何度も何度も党の方針が変わり、その度に粛清の嵐がふきあれ、何万人、何十万人もの人々が命をおとしている。党の方針を読み間違うとすぐ死につながるとう経験を何世代にも渡って続けてきた国。今も官製デモに「参加する、参加しない」が個人の生存を左右する大事な決断であるのだろうと思う。


上下巻合わせて1,000ページになるながーいお話。1ヵ月くらいリビングテーブルに「毛沢東」の本を置いておいたら、娘に「けざわひがし」って何?と質問されました。

毛沢東 ある人生(下)

毛沢東 ある人生(下)