チューリング 情報時代のパイオニア

アラン・チューリングは、1930年代に現在のコンピュータの基本モデルとなる万能計算機(チューリングマシン)を考え出し、第2次世界大戦中はドイツ軍の暗号解読に多大な貢献、もし彼がいなければ戦争があと2年は長引いたのではと言われる。戦後もコンピュータを使って人工知能、人工生命の分野で先駆的な研究を行うが、同性愛の罪で逮捕され、1954年に42歳で死亡。従来は自殺したと言われてきたが、著者は事故や他殺も可能性も否定できないという。


著者は、コンピュータ創世記におけるチューリングの貢献、イギリスの貢献を再評価すべきだというスタンス。一般的には世界初のコンピュータはアメリカのENIACということになっているが、イギリスは、その2年前に、電子式の暗号解読用コンピュータ、コロッサスを稼働させていた。しかし、コロッサスの存在は1970年代まで軍事機密とされ世間に知らされることはなかった。


チューリングは、立派な装置で力まかせに計算させるよりは、そこそこの装置をプログラムでうまく使うという考え方だったそうで、その哲学は初期の小型コンピュータに受け継がれたそうだ。また、チューリングは世界で初めてコンピュータで音楽を奏でさせたり、チェスをさせたり、人間と会話させたりしたことに関わっていたそうだ。考えつくことが斬新。暗号解読でベイズ統計を使ったという話も少し触れられている。


コンピュータは、イギリスでは暗号解読、アメリカでは砲撃の弾道計算と原爆開発のために開発され、インターネットもGPSも、もともとは軍事目的というのは、いろいろ考えさせられるな。

チューリング

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