探求 エネルギーの世紀
石油、天然ガス、原子力発電、再生可能エネルギー、省エネ、電力市場の自由化、電気自動車、バイオエタノール。エネルギーに関する最近までの(2011年の福島第一原発の事故まで)ありとあらゆる動きがまとまってます。上下巻ともに400ページを超える大著ですが、飽きないで最後まで読めました。
ベルリンの壁崩壊以降の石油市場を巡る、産油国、メジャー、中国などの新興国の動きを扱った、第1部「石油の新世界」、第2部「供給の安全保障」が特に面白かった。ソ連崩壊以降に独立したカスピ海沿岸のアゼルバイジャン、カザフスタン、トルクメニスタンは、欧米の石油メジャーの最新技術を導入して産油能力をあげつつ、自国の権益を守らなければならない。また、原油の輸送ルートがソ連時代に構築したパイプラインのみに頼る状況を脱却するために、ロシアを経由しない新たなパイプラインを欧米の資本をあおいで建設しつつも、隣国のロシアを刺激しないようにしなければならない。そこに今世紀に入って急速に需要を伸ばしてきた中国も、自国に向けたパイプラインを建設しようと関わってくる。利害関係者どうしの微妙なバランスで現状が成り立っていることがよくわかった。
2004年から2008年にかけて、原油価格が1バレル20ドル台から140ドル台まで高騰した原因については、中国、インドをはじめとした新興国が需要を急増させたこと、これは1960年代にヨーロッパや日本が経済成長にともなって原油消費を急速に増やしたことに匹敵する、30年に一度の需要ショックと呼ばれる状況だったそうだ。そして、この需要ショックに、ハリケーン「カトリーナ」によってメキシコ湾沿岸の油田や製油所が被害を受けたことや、ナイジェリア、イラク、ベネゼエラでの政情不安で原油の供給が途絶したことが重なったためとしている。
当時はいったいどこまで高騰するのかとあっけにとられていたことを思い出します。渦中にあっても、状況を丹念に分析すれば変化の傾向はわかりそうな気はするけれど、どこまで高騰するのか、変化の幅を予測するのはなかな難しいですね。
- 作者: ダニエル・ヤーギン,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/04/03
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