財政破綻後 危機のシナリオ分析

国債残高がGDPの2倍以上にもなろうという中にあっても、経済学の世界では、早急に政府支出の削減と増税を実施して財政再建を進めるべきという考え方と、まず景気回復、経済成長が第一で財政再建は経済の拡大によって自ずから達成できるという考え方が対立している。この本は、財政再建を優先すべきという立場から、もし財政破綻が現実のものとなった場合、政府はどんな対応をすべきかを明らかにする。

 

リーマンショック直後は、財政赤字など気にしないで、財政政策と金融政策を総動員して、とにかく景気回復に全力を尽くすべきだと思っていた。しかし、ここ2年くらいは、景気が回復して、人手不足が深刻になる中でも、政府は、相変わらずバラマキ型の景気刺激策を続けるばかり。どうなっているのかと心配になってきたところに、この本が目にとまり読んでみた。

 

政府が発行した国債を、市中銀行が引き受け、その国債市中銀行から日銀が買い取れば政府はいくらでも国債を発行できるので、財政破綻することはない。国内の個人資産は約1700兆円と国債を引き受ける十分な余力があるという。ある程度までは、その通りなのだろうが、かといって無限に国債残高を増やし続けていけるわけでもないだろう。国債への信任が失われて金利が高騰すれば、あっという間に国のキャッシュフローは破綻する。国債残高をゼロにすべきとは思わないが、どこかに限度を設けて、これ以上増やさない水準があると思う。

 

財政が破綻した場合、まずは、緊急避難的な支出削減を行い、次に最低限の国家機能を維持するために財政支出への優先付けを明確にする。公務員の給与を3割カットして、消費税を38%にして、新規の公共工事をゼロにして、医療費の自己負担率を大幅にアップしても全然足りない。

 

特に医療は大変なことになるようだ。政府負担分のお金が入ってくなくなり病院の倒産が続出するそうだ。ソ連が崩壊した時に、人工透析を維持できなくなり多くの透析患者が死亡したことを例としてあげている。

 

起こるかどうかわからないけれど、一旦起こると致命的な打撃を受ける事象なので、政府や国全体のことも心配だけれども、自分の身をどうやって守るのかも心配。他にも関連する本を読んでみたい。

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