今日の芸術 時代を想像するのは誰か
岡本太郎さんと言えば、テレビに出てなんだか訳のわからないことを叫んでいた人という印象しかなかったけれど、この本を読んだらそんな印象は吹き飛んだ。ものすごく理路整然としていて一言一言に力があって突き刺さってくる。
芸術とは心の底からわき上がって来る何かを表現するもので、超絶技巧を競うために取り組むのであってはいけないといいます。技巧を極めるのは工芸、芸能の世界の話であって、芸術とは違うと言う。だから、
今日の芸術は、
うまくあってはいけない、
きれいであてはならない、
ここちよくあってはならない
と最初に宣言します。そして、
芸術が特殊技能をもつ名人にしかできないものではなくなって、だれでもが作れる、本当に幅ひろい、自由なものに変わってきた、その点にこそ革命の実体があるのです。
だが、「だれでもが作れるものになった」と言っただけでは、まだ不十分です。私はもう一歩これを進めて、これからは、「すべての人が描かなければならない」と主張します。専門家、門外漢、しろうと、くろうとなんて区別は現代芸術にはありません。人間的に生きることに「専門家」がないと同じように、すべての人が、創造者として、芸術革命に参加するのです。
だから、みんなが今ここで芸術家になるべきだといいます。
「芸術は決意の問題だ」
「お互いに」とか、「みんなでやろう」とは、言わないことにしなければいけません。「だれかが」ではなく「自分が」であり、「いまはダメだけれども、いつかきっとそうなる」「徐々に」という、一見誠実そうなのも、ゴマカシです。この瞬間に徹底する。「自分が、現在、すでにそうである」と言わなければならないのです。現在にないものは永久にない、とうのが私の哲学です。逆に言えば、将来あるものならばかならず現在ある。だからこそ私は将来のことでも現在全責任をもつのです。
だから、「芸術は爆発」なんです。松岡修造もびっくりするくらい熱い。
今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)
- 作者: 岡本太郎
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1999/03
- メディア: 文庫
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