年収は「住むところ」で決まる—雇用とイノベーションの都市経済学
ICTやバイオサイエンス、医療器械など産業のイノベーションを実現する企業が特定の都市に集積する傾向が強まっている。なぜ、企業は一部の都市に集積するのか、どうしたらそのような企業を呼び込み次世代の産業を集積させることができるのか。第一線の経済学者が労働経済学、都市経済学の見解を一般向けにわかりやすくまとめています。
仕事に役立ちそうな点がたくさんあったので、気になったところをまとめてみます。
- 20世紀は製造業が産業のイノベーションを牽引し、製造業が立地することでその都市の所得水準が向上した。
- しかし、コモディティ化した製品の工場は安い人件費を求めて新興国へ流出し、欧米や日本における製造業の重要性は低下している。
- 日本の勤労者のうち製造業に従事する人の割合は1970年に28%だったが、2010年には、17%を下回るまでに減少している。
- ソフトウエア産業、医療機器、ICTなど、産業のイノベーションに取り組むことが、先進国の優位性を活かす道。単純な量産工場は新興国に任せればいい。
- イノベーションにとって最も重要なのは、優秀な人材。優秀な人材の価値がこれまでにないくらい高まっている。学歴による生涯年収の格差が広がっているのはそれを反映している。
- イノベーションを実現するにあたっては、特定の都市に集積することが企業にとっても、そこで働く優秀な人材にとってもメリットとなる。
- 具体的には、厚みのある労働市場を利用することで企業と人材のマッチングが進むこと、イノベーションを支える様々な周辺サービスが利用できること、狭い範囲に同業者が集積することで知識が伝播しイノベーションが促進されることの3つがある。
- どうすれば産業集積を形成できるかは、よくわからない。偶然の要素が大きい。シリコンバレーがICT産業の中心になったのも、ハリウッドが映画産業の中心になったのもたまたまとしかいいようのないきっかけである。
- レベルの高い大学があることや、優秀な人材が暮らしたいと思うような生活環境であることも、必要条件ではあるが、そうだからといって必ずしもイノベーションを生み出す都市になる訳ではない。
- 行政が税金を投入して、企業を誘致したり、業界のスター教授を招聘するなど、きっかけとなる最初の一押し(=ビッグプッシュ)することも有効であるが、永続的に効果があるのかわからないし、自治体間の競争が過熱し、企業へ経済効果に見合わない高額な優遇策を提供してしまう可能性もある。
- また、将来どんな産業が発展しどんな企業を誘致すべきかは誰にもわからない。行政がベンチャーキャピタルの真似事をするわけにもいかない。
- 他の都市へ流出してしまう可能性はあるものの、教育に投資することが何よりも重要。
- ビッグプッシュは企業誘致、人材誘致の外部効果に見合う補助金の額にすること。
年の初めに、いつもより少し長い射程で考えるきっかけになりました。

年収は「住むところ」で決まる ─ 雇用とイノベーションの都市経済学
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