仏教思想のゼロポイント:「悟り」とは何か
ゴータマ・ブッダの言う解脱・涅槃とはどんなことなのか? を、原始仏典に基づいて解説した本です。
自分という実体があるのではない。過去にあったことが原因となってたまたま現在の状況があるだけ。自分は常に移り変わる。そんな我々が物を見る時は、網膜に写った光の陰影をそのまま感じているのではなく、好きとか、嫌いという感情、欲望を背景に、物語を見ている。それは、聞く、触る、嗅ぐ、味わうときも同じ。好き嫌い、欲望、過去の経緯と切り離して世間を認識することはできない。
好き嫌い、欲望をはなれて世界を見ることができたときが悟り。それは我の消滅であり、世間の終わりでもある。
ゴータマ・ブッダは、来世の有無、この世の果ての向こうには何があるのか、死んだらどうなるのかというような形而上学的な問いにたいしては、わからないし、どっちにしろ生きることの苦を取り除くことには関係ないので、何も語らない=無記という立場をとるところが面白い。
著者は仏教の研究者でミャンマーの瞑想センターで仏教の勉強をした経験もあるとのこと。仏教の核心をつかむにはコンパクトでわかりやすい本だと思う。