断腸亭日乗 巻之十

永井荷風が大正6年から昭和34年に書いた日記。年齢でいうと37歳から81歳、巻之十は大正15年の分。ということは、荷風が46歳の時の日記です。


女性と箱根に遊びに行っていて親に死に目に会えなかった1月から始まります。小説を執筆するか本を読んで夕方芝居を見に行って、夜銀座のカフェでご飯を食べて、女性の家に行くor女性と一緒に家に帰るという日常が延々と綴られます。ほぼ毎日会うような懇意の女性はこの1年だけでも2人登場します。年の後半はほぼ毎日銀座の「タイガ」というカフェに行ってます。店が終わった後には、そこの女給さんと甘味処に行って一緒に家に帰ったりしてます。こんなもん読んで何が面白いのかと思いつつ、でれでれと最後まで読んでしまいました。


何気ない記述から当時の生活の様子が伺えます。

夜銀座に往くに号外売りしきりに街上を走るを見る。聖上崩御の時近きを報ずるものなるべし。頃日の新聞朝夕陛下の病況を報道すること精細を極む。日々飲食物の分量および排泄物の如何を記述してゴウも憚るところなし。これ明治天皇崩御の時より始まりしことなり。

大正、昭和初期の日常生活といっても、今と断絶している、劇的に違う訳ではない。少なくとも何かしら連続しています。

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)