毎月新聞

NHK教育テレビの「ピタゴラスイッチ」を手がけている佐藤雅彦さんが毎日新聞に毎月連載していたコラムです。「だんご3兄弟」や湖池屋ポリンキーのCMを作った人です。日常の生活に潜むちょっとした割れ目を取り上げて考察する視点がおもしろい。

「じゃないですか禁止令」

「これ余ってたらもらっていいですか。ほら、私たち学生って、こういうレアものに弱いじゃないですか。」
(中略)
欲しければす、素直に欲しいと言えばいいのに、それを「私たち学生って」と言うことで、一般論にしている。なぜ、個人的な欲望を、わざわざ、学生一般のこととして置き換えなくてはならなかったのか。それは、この女子学生が、その珍しいお菓子を欲しいと言うこと自体が、ずうずうしいという事を内心、わかってしまっていて無意識のうちにそれをごまかしたいからなのだ。

油断すると私も使っています。確かに卑怯なものの言い方。他には「〜と(世間では)言われている。」とか、「〜と思われる。」。自分が言ってる、思ってるのに、主語をぼやかして逃げてる言い方です。とくに、「思われる。」は気になって仕方ない。「と思ってるのはあんたやろ。」と言いたくなる。


「文字が出す騒音」は、ボストンのカフェと新幹線のグリーン車で感じる静けさの原因を考えてみると、両方とも看板や中刷り広告などの文字が無いことだったというお話。


確かに。昔アメリカに住んでいたころ、半年に一回くらい出張で日本に来て、電車に乗ると車内には広告、外を見れば看板が次々と目に入ってきて、しかも,ひさしぶりに見る日本語がうれしくて無意識に全部読もうとしていました。一日外にでると文字を追うのに疲れ果てました。


アメリカにいるとそもそも看板が少ないですし、看板があっても根性入れて睨み付けないと意味がわからないので、必要な時以外はスルーしてるので静かなもんです。


大学で数学を学んだ著者ならではの話の展開は、証明問題を気の利いたやり方で解くような「目からウロコ」感があります。

毎月新聞 (中公文庫)

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