暮らしのためのデザイン

昔の日本の家や道具は、「身度尺」で測って作ってあったので使いやすかった。

「身度尺」とは、人の身体の長さに合わせて道具や家の寸法を決めることです。お椀なら四寸(120ミリ)。日本の何処の漆器産地の汁椀も4寸になります。これは、両手の親指と中指で輪を作ったときの直径と同じになるそうです。これよりも大きくなると伏せたお椀を片手でつかめなくなります。


お盆は尺2(=1尺2寸=360ミリ)。この大きさは日本人の腰の幅だそうだ。これにお盆を持つ手の寸法を加えると尺5(=1尺5寸=450ミリ)になり、京間の廊下だと通路幅は3尺あるので、お盆を持った2人が楽にすれ違うことが出来るそうです。


ビールの大瓶、3合徳利、蕎麦猪口、湯呑、茶筒。これらの直径はほぼ2寸5分(75ミリ)で、片手でにぎってピッタリの太さになっているそうです。

岩手の古道具屋の親父が教えてくれた。「茶碗の籠はな、一ぺんに二つ買ってな、一つ使っている間にもう一つを干し上げて交代で使うもんよ。そうすれば万年道具なのさ。」

竹製の茶碗籠、お櫃は同じものを二つ買って交代に乾かしながらつかうと長持ちするとのこと。万年道具って言葉がいい。靴やスーツも同じですな。


他にも、漆を塗るのに使う「へら」をフライ返し、お好み焼のへらに使ってみたり、「うづくり」という木工品の仕上げ用工具を紹介したりと、今まで知らなかったことが次々と出てきます。昭和54年に発行された本なので、汽車の垂れ流しトイレは、なんとかしないといけないと提言しているところは時代を感じますが、その他の内容は全く古さを感じさせません。暮らしまわり関連では久しぶりに面白い本に出会いました。

暮しのためのデザイン (新潮文庫)

暮しのためのデザイン (新潮文庫)