キャッチボール

浪人中の息子が、藪から棒にキャッチボールがしたいと言い出した。

 

「いいね。やろう、やろう。」と答えたものの、よく考えたらうちにはグローブもボールもない。私自身は、小学生の頃は学校が終わると友達と野球ばかりしたいたし、その頃はプロ野球も好きで見ていたが、中学生になってからは、野球をすることが全くなくなったし、テレビでナイターなんかを見ることもなくなった。息子が小学生の頃には、こちらから野球を教えるとかキャッチボールをやらせたことも一度もない。だから、息子は高校までは野球を全然知らなかったようで、バッターが打った後は、右側に走るのか、左側に走るのか私に聞いてきたことがあった。

 

そんな息子が、最近BS放送の野球中継をよく見ていると思ったら、少しルールがわかるようになって、野球に興味が出てきたのだそうだ。それで自分でもやりたくなったとのこと。

 

とりあえず、グローブと軟式ボールを買いにスポーツデポに行った。本格的なグローブは安くても1万円くらいからで、高いのは5万円くらいのもある。50過ぎのおじさんと、自宅でゴロゴロしている浪人生が暇つぶしにキャッチボールをするだけなので、そんな本格的なのはいらない。売り場をウロウロしていたら、3千円のお遊び用のグローブがあったのでそれを二つと、2個で699円の練習用軟式ボールを買った。

 

次の問題は家の近所に大人がキャッチボールできるような場所がないことだ。近所の公園では、子供ならまだしも大人が一生懸命キャッチボールを始めれば近隣の人に怒られそうだ。ご近所の手前、家の前の路上というわけにもいくまい。小学校のグランドも開いていないだろうし、浅野川の河川敷も狭い。

 

仕方がないので、車に乗って卯辰山のてっぺんにある運動場に行くことにした。あそこなら周りに民家はないし、夕方なら他の人もいないだろう。2人で準備をしていると、娘も学校でソフトボールをやっているところなので私も行きたいという。娘も連れて行くことにした。

 

娘が幼稚園の時に買った子供用のグローブをどこからか引っ張り出してきていた。運動場で3人で三角になってキャッチボールを始める。息子はぎこちないところもあるが、普通にボールを受けて投げることができる。娘はボールを投げるのは上手だが、ボールが怖いのか受け取る時に腰が引けている。ボールを受けるときは体の正面で両手で受け取るように、とか、ゴロは腰をしっかり落として受けるようにとか教えながら3人でボールを回す。娘はグローブだけひょいと差し出してボールを取ろうとするので、グローブを外して素手でボールを受け取る練習もやらしてみた。

 

すぐに飽きるかと思っていたが、やり始めると楽しい。1時間があっというまに過ぎて汗だくになった。私は木陰で休憩して、2人でキャッチボールをやっている姿を側で眺めていた。この歳になって息子と娘がキャッチボールする姿を見ることになるとは思わなかった。

 

これからも時々キャッチボールをやろう。次はバッティングセンターへ行くのもいいかもしれない。