イベリコ豚を買いに
著者である野地さんはノンフィクション作家。食やスポーツなどの分野での著書がある。知り合いの経営者に勧められてイベリコ豚を取材しようとしたところが、日本で口蹄疫の感染が発生したばかりにスペインの生産者から取材を断られる。それでも、なんとかして取材するために、取材ではなく、イベリコ豚の買い付けに行くということにしたことが発端になっている。
著者は、実際にイベリコ豚を仕入れる。仕入れたからには売らなければならない。精肉として売るのは衛生管理上も何かと難しいので、加工品として売ることにする。この本は、前半は、スペインのイベリコ豚での飼育や、その肉を使った生ハムの生産についてのお話。後半は、著者の知り合いの精肉業者やシェフを巻き込んでのイベリコ豚を使った新商品を開発の物語となる。
後半の新商品開発の物語が面白い。今は、ネットでいろんな食品をお取り寄せできるけれど、その裏で安全でおいしい商品を届けるために、調査し、アイデアを試し、試作を繰り返し、流通体制を整えるなど細部にわたる手間暇がかかっていることがよくわかる。
もちろん、スペインのイベリコ豚、生ハムの情報もたっぷり。食べたくなったので、本書にも登場する栃木県のグルメミートワールドで、試しにスペインの生ハムを塊で買ってみた。
いつもはスライスされたものしか買ったことがなかったので、塊のボリューム感には妻も娘も大喜び。早速スライスして食べてみた。
うまく薄く切れたものもあれば分厚くなったものもあったけれど、どちらもおいしい。塩味はしっかりしているけれど、当たりはまろやか。ワインが進む、進む。
涼しくなったら原木で買ってみようかしら。