ひぐらし

朝から暑い。せめて8時まではエアコンなしで過ごしたいと、窓を全開にして扇風機にあたりながら新聞を読んでいると、妻がボサボサの髪のまま起きてきて、「暑い。エアコンつけないの?」と聞く。一度目は、「昨日より涼しいから、もう少し我慢する。」と答える。妻が洗濯ものと着替えをして2回めにリビングに来たときには、「暑い、ガマン大会か?」とながつけるように言い放つので、仕方なくエアコンのスイッチを入れる。
 
テレビでは、地上波から衛星放送までオリンピック。せっかくなので普段見ることがない、マイナー競技を重点的に観戦しようと、アーチェリーとホッケーを見る。11時からは男子の自転車ロードレースが始まる。こちらはネット配信のみなので、パソコンで観戦。
 
スタートは「府中の武蔵野の森公園」。最初は府中の街をパレードする。大國魂神社の境内を走り抜けたのには魂消た。手水舎の横をかすめて自転車の大集団が走っていく。郊外のラーメン屋さんや家電量販店の看板を背景に、ツールやジロを走った選手たちがパレードする景色も味わい深い。ネット配信はアナウンサーがつかないので、中継のオートバイがひろう沿道で応援している人の声やら、ヘリコプターのパタパタいう音が垂れ流しになっているのも臨場感があってよい。
 
エアコンを聞かせて、本を読みながら、居眠りをしながら、中継の画面を眺めていた。東京の街を脱出すると、木々が生い茂る中を集団が往く。集団の前からと、後ろからオートバイが撮影し、上空からはヘリコプターが中継する。ツール並の充実した映像は、アナウンスなしの絵ヅラだけ眺めていても飽きない。
 
先週までやっていたツールと違い、街並みはバラバラで、店舗の看板で覆い尽くされているけれど、山中のむせ返るような濃い緑や、富士山麓の草原を駆け抜ける集団を、上空から撮った景色が美しい。午後も遅くなって、峠をかけのぼる選手の正面からの西日がさす中、ひぐらしがかなかなかなと鳴く声も趣深い。
 
雰囲気だけでも味わおうと見始めたロードレース、結局、6時間ほぼ全部観戦してしまった。