キムチの文化史 朝鮮半島のキムチ・日本のキムチ
キムチの起源と進化の状況を、朝鮮半島と日本に分けて丁寧に辿ります。キムチの説明の前段として漬物の分類と歴史についても語られます。過去の料理書や歴史書の記述を丁寧に分析してキムチの意外な事実が明らにしていきます。
キムチには、唐辛子をつかった一般てきなキムチと水キムチがある。水キムチは野菜を塩水に漬けて乳酸発酵させたもので、こちらのほうが古く、中国東北地方の「酸菜」が起源ではないかとのこと。酸菜は白菜を塩漬けして乳酸発酵させたもので大変酸っぱい。スープや炒め物にします。(たまたまこの前食べた。)
今スーパーに並んでいるような、真っ赤な白菜キムチが日本で一般的になったのはせいぜいここ30年ほどで、キムチが朝鮮漬と呼ばれていた頃は今ほど唐辛子で赤くなかった。
さらに、朝鮮半島においても赤い白菜キムチ普及するのは意外に最近のことで、19世紀末に朝鮮半島南部の庶民に始まり、次第に北上、全体に普及するのは朝鮮戦争後のことだそうだ。しかも、1970年代の白菜キムチの写真を見ると、白菜がほんのり赤い程度でどぎついほどの赤に染まるのはその後の話。そもそも、現在のような結球した白菜は西洋からきたもので、普及しだすのは19世紀半ば以降のこと。
日本で漬物が普及したのも案外新しい。
私たちは野菜が豊富な環境の中で暮らしているので、昔から野菜が身近なものであったかのような錯覚を覚える。だが実際にはこのような環境は近年できたものだった。
野菜はほとんが外来で、日本原産の野菜は、ミツバ、ウド、セリ、フキなど数えるほどしかない。
大根を作り始めるのは江戸時代、人参や牛蒡も特別な日の贅沢として食べられていたらしい。明治半ばまで、山村では山で採るフキや蕨に頼っていたそうだ。
明治中頃までの地方農村では、野菜をあまり作らなかったが、まず大根栽培が歓迎され、その後の50年間に、さまざまな野菜がどんどん栽培されるようになったのである。
そして、これによって漬物食が農民にまで行き渡る。つまり、漬物の農民への普及を阻害していたのは皮肉なことに、彼ら地震が栽培する野菜の供給不足にあったのである。
(中略)
古くなつかしい風景のように思いがちな冬支度の漬物漬け作業も、実際にはことのほか新しく20世紀になってから誕生したものであったのである。
野菜の供給も限られていたし、塩が貴重なものであったことを考えると、昔は漬物は高価な食べ物だったのだろう。時代劇で農民が山盛りの漬物で御飯食べてたらおかしいってことか。
自分が生まれた時に既に存在していたものは、あたりまえすぎてそれが無かった頃のことはなかなか想像できないものです。こんな分厚い本よんでうるさいくらいに説明されてやっと「そう言われれば、そうかもしれん。」と思えるようになります。
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