みその本 みその料理

お味噌を使った料理を紹介する本。全体で200ページのうち、みそ汁の部分が118ページを占める。出汁のひきかた、出汁の種類、みその使い方、みそ汁に合う具を丁寧に説明していいます。読み終われば、ちゃんとしたみそ汁をいただきたくなること必至。


辰巳浜子さんのこの書き出しに引かれて読み始めました。1920年ごろの朝の家庭の風景が目に浮かぶ。

 台所からかつお節をかく音がひびいてくる。やがてすり鉢でみそをする音がゴロゴロと聞こえだす。もう朝が来た!そろそろ起きないとおそくなる。着がえをすませて洗面所へ。化粧部屋にはいると、鏡台のまえにたとう紙が敷かれて、平たい金だらいの中に、びなんかずらがひとひら沈んで、くせ直しの熱いお湯が置いてある。
 心持ちとろみがかった熱い湯の中へ指先を入れて、フウフウと口をとんがらかしてしぼりあげ、地肌をもみながらくせ直しを始める。油じんだつげの荒ぐし、とかしぐし、すきぐしなどを使い分けながら、ユニオンの赤いローションをふりかけて長い髪を念入りにすく。そのころ決まったようにかつお節のだし汁をひくにおいが流れてくる。早く髪を結いあげないと朝のご飯に間に合いませんよ、とまるで合図でもあり、催促でもあるかのように。
「そろそろ、お汁をお付けしてもよろしゅうございますか。」
と声をかけられるころ、リボンを結び終わって、両横をそろえてちょうちんのようにふくらみをつけるころとがいっしょになる。合わせ鏡をあわてて置きながら、
「ハイ!どうぞ。」
と返事をする。手を洗ってお茶の間にはいると私のすわる場所にはもう湯気の立ったごはんとおみそ汁がならんでつけてある。
「おはようございます。いただきます。」はいつも一声。お椀の中を箸でちょいとなでて、ひとくちすすってふくむ。お豆腐のときも、大根と油揚げのときもわかめのときも、いつも最初のひとくちがおいしい。ごはんをひと口食べてまたお汁、このかわりばんこのふたくちみくちがまったく大好き。なんともいえないおいしさで、のりや塩物やお豆にはいつもその後に箸が出る。

私の好みは、「煮干と昆布でひいた出汁、みそは2年寝かせた手作り、具は油揚げと大根。」

みその本 みその料理

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