国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源
ある国が経済的に繁栄するのはなぜか?繁栄する国と貧困に苦しむ国の格差ができる根本の原因は何なのか? 著者は、サハラ以南のアフリカ諸国、アメリカとメキシコ、北朝鮮と韓国、西ヨーロッパと東ヨーロッパ、日本と中国などの事例を詳細に検討する。
自然環境、文化、民族 歴史の経緯。著者は、これらは経済状況の違いの原因ではないと断言する。根本の原因は、政治制度とそれを基盤とした経済制度の違いだという。
収奪的な政治制度、経済制度の国は衰退し、包括的な政治制度、経済制度を持つ国は繁栄する。
収奪的とは権力が少数のものに集中し、権力者がそれ以外のものから富を収奪するような仕組み。革命後のソ連が農業から重化学工業へ資源配分を変更することにより一時的に経済成長を達成したように、収奪的な仕組みの国でも、権力者の裁量で資源配分を変更することにより一時的に繁栄することは可能。しかし権力者に権力が集中しているがゆえに、既得権益を侵害するような技術革新は敬遠され、持続的な成長は不可能だといいます。
包括的(inclusive)とは、政治権力が分散しており、がんばって稼げばその人の財産になるような制度。包括的な制度の下では、個人や企業が創意工夫をしようとするインセンティブが働き、技術革新とそれにともなう「創造的破壊」が継続的に行われ経済成長につながる。
社会が既得権益を脅かすような創造的破壊を伴う技術革新を持続的に受け入れられるかどうかが、繁栄を継続する鍵だといいます。
一旦、収奪的な制度となるとその悪循環が続くといいます。根本的な改革を打ち出して権力を奪取した者が、再び収奪的な制度に戻ることになるそうです。
収奪的な政治制度のもとでは権力の行使に対する抑制がほとんどないため、前の独裁者を打倒し、国家の統治を引き継いだ人々による権力の行使と乱用を抑える制度は事実上皆無だ。また収奪的な経済制度のもとでは、権力を掌握し、他人の資産を搾取し、独占事業を設立するだけで、莫大な利益と富が得られることになる。
日本やアメリカも市場に任せて放置しておけば、成功した企業はどんどん大きくなる。貧富の差はどんどん拡大する。成功者は既得権益を持つ者としてあらたな参入者や技術革新の芽をつむこと考えだすだろう。どこまで風通しのいい社会を続けることができるかが鍵だと思う。
- 作者: ダロンアセモグル,ジェイムズ A ロビンソン,稲葉振一郎(解説),鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/21
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (30件) を見る