クリミア戦争 下
1853年~1856年に戦われた、イギリス、フランス、トルコ対ロシアの戦争。主戦場が黒海のクリミア半島だったことから、こう呼ばれている。ナイチンゲールが活躍した戦争、トルストイもロシアの将校として従軍している。
下巻は、セヴァストボリの陥落からロシアの敗戦まで。
この本を読んで、クリミア戦争以降の国際紛争の構図は、ざっくり言ってしまうと、イギリス、アメリカ、フランス対その既得権益に挑戦する国の戦いじゃないかと思った。いち早く産業革命を成し遂げ、国民国家を構築し植民地支配を確立したイギリス、フランスに経済、宗教の権益で対立する国、クリミア戦争ではイギリスの植民地であるインドを脅かし、ロシア正教の勢力拡大を図ろうとするロシアが敵となり、第一次世界大戦では経済的に急成長していたドイツ、オーストリアが、第2次世界大戦では、新興国のドイツと日本が、冷戦時代はソ連、最近では、アラブの産油国を巡ってイスラム諸国との対立だ。
クリミア戦争では、ロシアに対抗するために宗教上対立するはずのオスマントルコと組んだように、敵の敵は味方とばかりその時々でしたたかに同盟関係を構築し、敵が変われば同盟関係もガラリと変える。第2次世界大戦でドイツ、日本に対抗するためにソ連と組んだり、ソ連のアフガニスタン侵攻に対抗するために、イスラム諸国を支援する。
そう思うと、結果論かもしれないけれど、この間負けなしのイギリスのしたたかさにはちょっとかわなないと思った。
ヨーロッパの歴史を現代から過去に遡っていきたくなった。