卵焼き紛争

妻は朝食にはたいてい卵焼きを作る。卵3個を卵焼きにして息子の弁当用に2切れを使い、朝食には卵焼きを4切れ出してくれる。私と息子と娘が食卓について食べ始めると、まずは一人一切れ卵焼きをとる。妻はたいてい洗い物か、弁当のおかずを作っていることが多いので、3人がご飯を食べ終わる頃には、お皿の上に卵焼きが1つだけ残ることになる。ちゃっかりした娘は、タイミングを見計らって、「ママ、卵焼き食べる?」と聞いて、妻が「いらない、食べていいよ。」と言うか言わないかのうちに、「ありがとう。」と言ってパクッと食べてしまう。私と息子はもう一切れ食べたかったとなと納得いかない気持ちを抱えることになる。

 

毎日娘だけが卵焼きを2切れ食べるので、妻に「もし、あなたが卵焼きを食べないのなら、最初から3等分にして出してくれないでしょうか?」とお願いしてみた。しかし、妻は「なに、そんなみみっちいこと言ってるの。」とにべもない。今朝も、同じように4切れが食卓に出てきて、娘が2切れ目を食べようとした。今日はたまたま妻が一緒に食卓についていたので、「大したことではないのだけれど、日々薄紙を重ねるようにして、食べ物の恨みが積み重なるのはまずい、いつ大規模な紛争に繋がるかわからないので、世界平和のために今日はあなたがこの一切れを食べるように。」と言って妻に食べさせた。

 

今月末に息子は2回目の大学受験を迎える。結果はどうであれ4月からは家を出て行くことになる。そうすると卵焼きの数を巡ってこんな会話をすることもなくなるだろう。何気ない日々のやりとりが急にいとおしく感じた。