分ける・詰め込む・塗り分ける 読んで身につく数学的思考法


この本のおかげで、ようやく我が家の朝の食卓にも平和が訪れるだろう。


朝ごはんに妻が卵焼きを作ってくれる。作ってくれるのはいいけれど切らずに丸のまま食卓に出す。そうすると私が皿の上で4等分に切り分けることになる。うちの卵焼きは太さが揃った長方体でなく両端が細いラグビーボールのような形をしているので、どれが一番大きいのかパッと見ただけではわかりづらい。どれを取るかで親子入り乱れてもめる。


たいていは私が譲って子供たちが先に取ることになる。些細なことなのだが毎回こんなことが続くと不満が蓄積する。なんとかみんなが満足するように等分に分けたいと思っていた。二人で分けるのなら簡単だ。「わたしが切って、あなたが選ぶ。」方法で文句はでない。4人になったらどうすればいいのか。3人が順番に4等分になるようにナイフを入れて、切らなかった人から順番に取ったらどうだろうかなどと考えてみたこともあったがどうも違う。


この本の第1章「きみのケーキは大きいぞ」に答えがいくつか書いてあった。切る回数が一番少なく現実的なのは「移動式ナイフ」を使う方法だ。3人でケーキを分ける場合にはこうなる、

一九六一年、レナード・ドゥビンズとエドウィン・スパニアによって、「移動式ナイフ」を使うという異色の手順が提案された。ケーキがテーブルに置かれ、その左端の上方でナイフが保持される。つぎに、ナイフはゆっくりと右に動きはじめ、ケーキの上方を横断していく。ケーキのうち、その時点でナイフの左側にある部分をLとしよう。トム、ディック、ハリーに与えられる指示は、Lの価値が自分の基準で全体の三分の一になった瞬間、「ストップ!」と叫ぶことだ。だれかが叫んだら、ナイフを止めてケーキを切、叫んだ人にLを与える。あとの二人は残りのケーキに対して、「わたしが切って、あなたが選ぶ」手順を踏むか、ふたたびナイフを動かして、今度は二分の一の価値になった瞬間に叫べばいい。

目から鱗。確かにこれなら誰からも文句は出ないし、人数が増えても同じ手順を踏めばいい。こんなことを真面目に考えてくれた数学者に感謝。


分ける・詰め込む・塗り分ける―読んで身につく数学的思考法

分ける・詰め込む・塗り分ける―読んで身につく数学的思考法